フィオミア(読み)ふぃおみあ(英語表記)phiomia

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィオミア」の意味・わかりやすい解説

フィオミア
ふぃおみあ
phiomia
[学] Phiomia

ゾウ先祖のグループの一つとされる絶滅した哺乳(ほにゅう)動物。その化石は北アフリカのエジプトリビアチュニジアで発掘されている。それらの化石は、約3500万年前ごろの地質時代の始新世末期から漸新世初期の地層からみつかっている。フィオミアという名前は、化石が最初に発見されたエジプトのエル・ファイユームEl Faiyûmの地名に由来している。体長2メートル、肩の高さが1メートルの小形動物であるが、骨格はいまのゾウに類似して、脚は比較的に長く、頭骨からは長く伸びた吻(ふん)(頭部の口先部分)があったと考えられ、上顎(じょうがく)・下顎とも2本の切歯が牙(きば)状に突き出していたことがわかる。同じ地層からは、類似したパレオマストドンPalaeomastodonの化石も発見されていて、これと同じものとされたこともある。しかし、両者は臼歯(きゅうし)の形態が異なり、ゾウの先祖でもそれぞれ別のグループに属するものとされている。ゾウの仲間である長鼻類が、地球上で繁栄するようになったのは、このフィオミアとパレオマストドンよりも500万年も後の時代になってからで、これらの先祖と後の時代のゾウたちとの関係は明らかではない。

亀井節夫


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のフィオミアの言及

【ゾウ(象)】より

…メリテリウムは他の長鼻類との系統関係はなく,独立のメリテリウム亜目をつくる。 今日のゾウにつながる先祖は,マストドン亜目の長鼻類の中に求められるが,メリテリウムと同じくファユームで発見されたパレオマストドンPalaeomastodonとフィオミアPhiomiaがその中でもっとも古く,3500万年前の漸新世前期のものである。マストドン亜目のものは,頭骨が低く,胴が長く,四肢が短いことで,長鼻類の他のグループであるデイノテリウム亜目やゾウ亜目のものと区別され,上下のあごの切歯は左右それぞれきば状の1本を除いては退化し,犬歯は失われ,吻はのびている。…

※「フィオミア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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