フクロウチョウ(読み)ふくろうちょう(英語表記)owl butterfly

改訂新版 世界大百科事典 「フクロウチョウ」の意味・わかりやすい解説

フクロウチョウ (梟蝶)

鱗翅目フクロウチョウ科Brassolidaeに属する昆虫の総称。ジャノメチョウ科にごく近縁で,大型のフクロウチョウ属Caligo,小型のヒメフクロウチョウ属Opsiphanes,頭部が少し引っ込んでうずまった感じのナポレオンフクロウチョウ属Dinastorなどを含む。開張4.5~14cm。メキシコから南アメリカにかけての熱帯,亜熱帯に分布する。フクロウチョウ属のものは,後翅に1個の大きな眼状紋があり,翅をぱっと開いたときに,その左右の1対が動物の目玉を思わせ,鳥類などの捕食性天敵を威嚇するのに一定の効果をもつといわれる。フクロウチョウの名はこの目玉模様がフクロウのように見えるというところからきている。おもに日没後のたそがれの中を活動し,雄は枝先や岩の上などにとまって周囲になわばりをつくる。花を訪れず,マンゴーなどの落果によく集まる。幼虫はバナナなどのバショウ科,サトウキビなどのイネ科の植物を食べる。ヒメフクロウチョウ属のチョウは飛び方が敏速で,種によっては市街地に栽培された食樹のヤシ科植物から幼虫やさなぎが見つかることが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロウチョウ」の意味・わかりやすい解説

フクロウチョウ
ふくろうちょう / 梟蝶
owl butterfly

昆虫綱鱗翅(りんし)目フクロウチョウ科に属するチョウの総称。中・南アメリカの特産で、スチッケルの分類(1909)によれば11属74種を含む。東洋の熱帯地域に分布するワモンチョウ科に近い仲間である。大形種が多く、後ろばね裏面に大形の眼状紋があり、一見フクロウの顔に似るのでこの名がある(和名英名直訳)。しかし、この科のすべての種に顕著な眼状紋があるわけではなく、これを欠く種もある。この大きな眼状紋は捕食者の鳥や獣を驚かせて難を免れる効用があるという。ミイロタテハが日中の日盛りに活動するのと対照的に、フクロウチョウの仲間は薄明かりのころ、早朝よりもとくに夕暮れに活動し、樹幹に下向きに止まってはねを開閉すると、眼状紋をもつはねはフクロウの顔とそっくりにみえるという。幼虫の食草はバナナ、ヤシの類である。

白水 隆]


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世界大百科事典(旧版)内のフクロウチョウの言及

【行動】より

…多くの昆虫,魚などは,体色や形の効果を利用し隠れる防衛を行っているが,逆に目だつ色彩やパターンを利用して相手を威嚇して身を守る場合もある。フクロウチョウの後翅(こうし)にはフクロウの目のような斑紋(目玉模様)があるが,普通に静止しているときには前翅の下になって見えない。しかし,危険を感じてはばたくと突然,後翅の模様が現れ,捕食者である鳥を威嚇する。…

【チョウ(蝶)】より

…全世界に約2500種が知られている。(5)フクロウチョウ科 中央および南アメリカに分布するチョウで,後翅裏面にある大きな眼状紋がフクロウの目を連想させるところからこう命名されたチョウとその近縁種約80種のグループ。ジャノメチョウ科と近縁で,幼虫は単子葉植物(たとえばバナナなど)を食べる。…

※「フクロウチョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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