改訂新版 世界大百科事典 「フトバ」の意味・わかりやすい解説
フトバ
khuṭba
イスラムにおいて金曜日の正午の集団礼拝や二大祭(イード)の礼拝の際に,礼拝に先立ってなされる説教。これを行う人間をハティーブkhaṭībという。フトバは2度なされ,ハティーブはフトバの際は立ち,最初と2度目のフトバの間は座るなど,フトバの儀式は細部にいたるまで定式化されている。フトバは2度とも,まず神をたたえ,預言者ムハンマドに神の祝福があらんことを求めることによって始まり,続いてコーランの数節が朗誦される。この際,ムハンマドに続いて,その時の支配者にも神の祝福が求められることがしばしばある。このような形でフトバで名を読み上げられれば,集団礼拝の参加者はその支配者の支配を承認したことを意味し,逆にその名がフトバから落とされれば,その支配が承認されないことを意味した。クーデタ,独立などの重要な政治行為が,フトバを通じて民衆に知らされたのである。
執筆者:後藤 晃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報