日本大百科全書(ニッポニカ) 「フリー・ペーパー」の意味・わかりやすい解説
フリー・ペーパー
ふりーぺーぱー
free paper
free distributed publications
無料配布紙・誌。収入を専ら広告のみに頼り、無料で読者に配布される定期刊行物をさす。新聞のように製本されていないものをフリー・ペーパー、雑誌のように製本されたものをフリー・マガジンとよんで区別することもある。フリー・ペーパーには、編集記事がほとんどない広告情報中心のもの、生活情報中心のもの、地域の一般ニュースを広くカバーするもの、音楽や車など特定の読者にターゲットを絞ったものなどがあり、その内容は多彩である。配布方法は、各家庭に配達するものや、駅などに設置されたスタンドに置くもの、街頭で手渡しするものなどがある。
日本ABC協会が部数調査するフリー・ペーパーを発行する30社によって、1998年(平成10)に設立された日本生活情報紙協会によると、日本では1940年代から地域情報紙としてのフリー・ペーパーが複数発行されていた。1959年(昭和34)には、電通が当時の東京における新興マーケット、すなわち人口密集地区に着目して、タブロイド判の団地新聞『アパート・ウィークリー The KEY』を創刊した。1971年に東京多摩地域でサンケイリビング新聞社が創刊した週刊『フジサンケイリビングニュース』(現『リビング新聞』)は、その後日本全国で発行されるようになり、2010年(平成22)には全国の56紙誌で800万部以上を発行するネットワークを構成している。
日本生活情報紙協会に加盟する34社は合計で53紙誌、約1779万部(2010)を発行している。
アメリカでも1940年代には、日刊のフリーペーパーが発行されていたようであるが、1995年にはスウェーデンのストックホルムで、一般の有料日刊紙に近い形のフリー・ペーパー『メトロ』が発行された。同紙はまたたく間に読者の支持を得て、その後、フランス、イタリア、イギリス、アメリカ、ロシアなどにも進出、同紙を発行するメトロ・インターナショナルのウェブサイトによると、世界の18か国、15の言語で発行されている(2010)。また、同紙に対抗するため、既存の有力紙もフリー・ペーパーを発行するようになってきた。日本でも無料日刊紙として『ヘッドライン・トゥデイ』が2002年(平成14)7月に創刊したが、既存の新聞社の対抗措置などもあって採算がとれず、同年11月には、芸能ニュースなどを幅広くカバーする『トウキョウ・ヘッドライン』という週刊紙として再スタートした。
[伊藤高史]