ジャワ語(読み)じゃわご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャワ語」の意味・わかりやすい解説

ジャワ語
じゃわご

マライ・ポリネシア語族インドネシア語派の一言語。インドネシアの中部、東部ジャワ島を中心にして、南アメリカのスリナム、南太平洋のニュー・カレドニア、マレーシアなど国外の移住者を含め、言語人口は5000万人を下らない。

 南インドのパッラバ文字で書かれた碑文が8世紀からあり、10世紀前後には『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』という二大インド文学の翻案も行われ、現在の民間芸能ワヤン(人形影絵劇)の重要な題材となっている。発達した敬語法で知られ、基本的な平常体(ヌゴコ)と尊敬体(クロモ)というレベルを中心に、二者の中間に位置する中間体(マディオ)、最上の敬意を表す最上敬体(クロモ・インギル)が使い分けられる。人称代名詞(人称接辞)、語彙(ごい)による区別が、平常体では目上から目下へ、尊敬体では目下から目上へと行われるが、平常体、尊敬体とも同じレベルの者同士でも用いられる。文法的接辞のうちでは、動詞につく-aké(平常)、-aken(尊敬)のみが区別される。


ぼくはぼくの子供に金をやる」の尊敬体は

わたしお父さんがわたしにお金をくださる」となり、maring(←paring)は最上敬体語彙である。最上敬体には相手を敬う場合のほか自分謙遜(けんそん)しても表すことができ、paringのような敬称とsaos「さしあげる」のような謙称とが区別される。

崎山 理]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャワ語」の意味・わかりやすい解説

ジャワ語
ジャワご
Javanese language

オーストロネシア語族の一つ,インドネシア語派に属する言語。ジャワ島に約 7000万人の話し手をもつ。文献も古くまでさかのぼり,最古の銘文は8世紀にみられる。7世紀から 1400年頃までを古代ジャワ語,一名カウィ語ともいい,ウィルヘルム・フンボルトの研究で有名。豊かな文学作品をもつ。その後 1550年までを中期ジャワ語,それ以後を近代ジャワ語という。ジャワ語には身分によって異なる文体を用いる習慣が確立していて,代表的なものに,上位者から下位者に向って使うンゴコと,その逆に使われるクロモがある。南インドのパッラバ文字から発達した独特のジャワ文字を用いる。

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