プラスチック船(読み)ぷらすちっくせん(英語表記)plastic boat

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラスチック船」の意味・わかりやすい解説

プラスチック船
ぷらすちっくせん
plastic boat

繊維で強化したプラスチックでつくった船。船体用プラスチックは、主としてガラス繊維を強化材として不飽和ポリエステル樹脂で固めたものである。FRP(fiber reinforced plasticsの略)船といわれることが多い。ガラス繊維は細くすればするほど単位断面積当りの強さが増すので、直径10~18マイクロメートルくらいの糸にして使用する。この糸を布やマット状にしたものに硬化剤を入れた樹脂をしみ込ませて乾かす。これを何層にもわたって積層してゆくと船の外板や甲板をつくる板となる。あらかじめ木で船の形を「雌型(めがた)」につくっておき、その内側で積層作業を行う。これは手作業でさほどの熟練がいらず、そのわりに製品の強度が高く、軽く、耐食性があるので、船体用木材の入手難が始まった昭和30年代(1955~64)にまずモーターボートに使用された。40年代(1965~74)には「ノリ舟」から始まって沿岸漁船やレジャーボートの船体材料として広く使用されるようになった。在来の鋼や軽金属と比べて強度はともかく、力を受けたときの変形量が大きいのであまり大きな船はつくれない。100総トン程度の漁船が建造されてはいるが、船種を問わず長さ20~30メートルのものが多くつくられ、10メートル以下の小舟はほとんどがFRP船である。しかし、FRP船は強化プラスチックでできているため、廃棄処理やリサイクルがむずかしい。このため、廃船の不法投棄が多発し社会問題化している。国土交通省は2000年度から2004年度まで「FRP廃船リサイクルシステム」の研究開発に取り組み、その成果をもとにして、2005年度から日本舟艇工業会が主体となり「リサイクルシステム」の運用が開始された。環境に負荷をかけずにFRP廃船を解体、粉砕してセメントなどの原材料として再利用する技術が実用化され、劣化・損傷した船体各部の修復・交換を容易化する技術も実用化すべく開発が行われている。

[森田知治]

 なお、2005年にFRP廃船が環境省において「一般廃棄物の広域認定制度の対象品目」に認定されたため、FRP廃船処理業の認可を地方公共団体ごとに取得する必要がなくなり、処理が全国的に行われるようになっている。

[編集部]

『日本海事協会編・刊『強化プラスチック船規則・強化プラスチック船規則検査要領』各年版』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android