繊維強化プラスチック(読み)せんいきょうかぷらすちっく(英語表記)fiber reinforced plastics

日本大百科全書(ニッポニカ) 「繊維強化プラスチック」の意味・わかりやすい解説

繊維強化プラスチック
せんいきょうかぷらすちっく
fiber reinforced plastics

繊維状強化材で複合化して、機械的強度や耐熱性を向上させたプラスチックをいう。FRPと略称されることが多い。補強材としては主としてガラス繊維、ほかに炭素繊維アラミド繊維、そのうちケブラーKevlar(アメリカのデュポン社の商品名)という芳香族ナイロン繊維が使われ、プラスチック(これをマトリックスmatrixとよんでいる)としては不飽和ポリエステルエポキシ樹脂などの熱硬化型の樹脂が多く使われている。もっとも一般的なものは不飽和ポリエステルをガラス繊維で補強したもので、大きな引張り強度と耐衝撃性をもつ材料になる。不飽和ポリエステル自体は硬質ポリ塩化ビニルポリメチルメタクリレートに比べて引張り強度は小さいが、ガラス繊維で補強することにより、またその含有量が増すほど引張り強度は大きくなる。エンジニアリング・プラスチックとして構造材料に利用できる。

 FRPの特徴は常温・常圧で成形することができ、とくに金型を必要としないし難燃性で海水などに耐食性がよいことである。建材ヨット小型船舶船体浴槽コンテナヘルメットなどに用いられている。

 炭素繊維やアラミド繊維などとエポキシ樹脂の複合材料は、ガラス繊維複合材に比べてさらに軽量であるから、単位重量当りの強度(これを比強度という)が他の材料と比較して非常に大きくなる。軽くて強い特徴を生かして航空機の機材として使われている。炭素繊維とエポキシ樹脂の複合材を使用すると、機体の重量を約30%軽くすることができるし、翼の面積も30%程度減少できる。アメリカでは航空産業での需要が多いが、日本ではどちらかというと、ゴルフクラブのブラックシャフト、釣り竿(ざお)、テニスのラケットなどレジャー方面に使用されている。

 エポキシ樹脂とガラス繊維とからなる積層板の表面などに銅箔(はく)を張り付け、さらに光感光性フィルムを張り付けたものは、産業用電子機器材料として多量に生産されている。

[垣内 弘]

『内田安三監修『「もの」と「ひと」シリーズ7 プラスチック』(1986・フレーベル館)』『百島祐忠・福田博著『複合材料の加工技術』(1989・冬樹社)』『シーエムシー編・刊『コンポジット材料の製造と応用』(2000)』『日本規格協会編・刊『JISハンドブック26 プラスチック1 試験編』(2001)』『日本規格協会編・刊『JISハンドブック プラスチック』2003年版(2003)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「繊維強化プラスチック」の意味・わかりやすい解説

繊維強化プラスチック
せんいきょうかプラスチック
fiber reinforced plastic; FRP

ガラス繊維アラミド繊維,炭素繊維などを樹脂と組み合わせ,繊維の高弾性率,高強度と樹脂の成形性のよさを利用した材料。繊維‐樹脂複合材料あるいは繊維‐樹脂コンポジットともいう。繊維と樹脂の複合形式には,短繊維を樹脂に分散させたもの,長繊維を特定方向に配列させたもの,織物や編組物を用いたものなど各種がある。単位重さあたりで比較すると,金属よりも高弾性率,高強度を得ることができる。また,金属とは異なるメカニズムによって,強靭性を発現させることが可能である。ガラス繊維や炭素繊維そのものは,もろい材料である。しかし,繊維は直径に対する長さの比(アスペクト比)が大きいので,複合材料内部で繊維が破断しても,繊維の側面に作用する剪断応力によって,繊維の破断端から破断端へと荷重が伝達される。このため,破断からただちに亀裂が複合材料全体に伝播することが避けられる。繊維と樹脂の界面は,伝播してきた亀裂を抑止する働きもする。ヘルメット,スキー板やテニスラケットなどのスポーツ用具,プリント配線基板,浴槽,自動車,車両,舟艇,航空機,人工衛星など各方面に応用されている。

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