行政法学上は,法令が契約その他当事者間の法律行為の効果の発生を行政庁による是認にかからしめている場合に,これを認可制と呼び,その場合の,行政庁が一定の法律行為を是認し,その法律上の効力を完成させる行為を認可と称する。認可は行政行為の一種である。
認可制は,認可を受けないでなされた法律行為を無効とするもの,すなわち,当事者がみずからの意思によって法律関係を形成し変更することを制限するものであり,近代法における私的自治ないし契約自由の原則の例外をなす。現行法上は,主として地方公共団体または公共組合の行う行為や,公益事業者その他国家の特別の監督の下に置かれた私人の行う行為について定められることが多い。地方公共団体の起債に関する自治大臣の許可(地方自治法250条),土地区画整理組合の定款の変更等に関する都道府県知事の認可(土地区画整理法39,86条),私鉄の運賃の認可(地方鉄道法21条),水利権の譲渡の承認(河川法34条)などがその例である。このほか,いわゆる不況カルテルおよび合理化カルテルの認可制(独占禁止法24条の3,24条の4)などの例もある。
認可制は〈許可制〉と区別される。後者は,当事者の行為の法律上の効力を制限する趣旨を当然には含まず,むしろ,許可を受けないで一定の行動をすることそれ自体を禁止するものである。したがってまた,必要な許可を受けないで行動した者については罰則が定められているのが通例であるのに対し,認可の場合には必ずしもそうではない。もっとも,農地に関する権利移動の制限(農地法3,5条)のように,許可制と認可制の性質を兼ね備えた規制のしかたもある。認可制は,また,当事者の意思に基づく法律関係の変動に対して第三者たる行政庁が関与するものである点において,行政庁自身が主体となって法律関係を形成する〈特許〉とも区別される。もっとも,例えば法人の設立認可などについては,特許と認可の区別は必ずしも明確ではない。なお,前記の立法例からもわかるように,学問上の認可の観念と法令の用語法とは必ずしも一致しないことにも注意する必要がある。
執筆者:小早川 光郎
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行政行為の一種で、法律行為の効力要件となるもの。第三者の行為を補充してその法律上の効力を完成せしめる行為と説明されている。ただし、これは学問上の用語であって、実定法上は許可、認可などの用語が混用されている。農地の譲渡の許可、運送事業の運賃・料金の認可、公共組合の設立の認可などがそうである。認可を受けないでした行為は無効である。学問上の許可の場合には、許可を受けないでした行為も処罰されるだけで、有効である。たとえば、許可を受けないでしたタクシー営業(いわゆる白タク)でも、処罰されるだけで、運賃を受け取ることができる。これに対して、農地の譲渡は、許可を受けないと代金を払っても無効になる。また、認可は第三者の法律行為の効力があることを前提として、行政的な観点から規制するだけであるから、私法上無効な行為は認可があっても無効であり、取り消しうべき行為は認可があっても取り消しうる。
[阿部泰隆]
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…逆に,そのような能力を制限し,または消滅させることを内容とする行為は,剝権行為と呼ばれることがある。(4)〈認可〉 私人間の契約など,特定の法律行為について,その効力を補充し,完成させることを内容とする行政庁の行為。たとえば,農地法の定める農地賃貸借の解約の許可は,前記の意味における許可としての性質のほか,ここにいう認可の性質をも有する。…
※「認可」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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