日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーターボート」の意味・わかりやすい解説
モーターボート
もーたーぼーと
motorboat
ガソリンエンジンなどの内燃機関で推進する比較的高速の小型舟艇をいう。滑走艇と排水量型に分類する。滑走艇はなるべく重量を軽くし、大馬力の推進機関によって高速を得、船底に作用する揚力を利用して前部の船底を水面上に露出し、後部船底を水面に接して飛ぶように滑走する。競走艇、高速のレジャーボートなどがある。長さ10メートルぐらいまではランナバウトrunaboutとよばれることもある。排水量型は、比較的速力が低く揚力は無視できる程度で、つねに浮力と重力がつり合っている。大部分のモーターボートはこの型式である。離島航路などの高速旅客艇、海上保安庁の巡視艇、水上警察の警備艇、地方自治体の漁業取締船、クルージング用のモーターヨット、交通艇、遊漁船、レジャーボートなど広範囲に使われている。滑走するほど速くはないが、25ノットから30ノットぐらいの船もある。内燃機関で推進する小型舟艇のうち、艀(はしけ)や土運船のような低速の貨物船はモーターボートとはよばない。
エンジンの装備形態からは船外機outboard motorと通常の船内装備とに分けられる。小型・軽量のディーゼル機関をプロペラ、舵(かじ)と一体化し、船尾後方の船外に脱着できる構造にした船外機は、レジャーボートなど比較的高速の小型艇に広く採用されている。
第二次世界大戦後、1960年代中ごろから、技術の発達に伴って、モーターボートに似てはいるが従来とはまったく異なる方式の船が現れた。船体浮揚方式が異なる水中翼船、ホバークラフト、半没水船、推進方式が異なるウォータージェット船、エンジンが異なるガスタービン船などである。これらの新しい形式の船は、あるいはモーターボートを超える性能によってそれにかわり、あるいは新しい用途を開いて船舶技術の可能性を広げている。
[森田知治]