翻訳|motorboat
機動艇ともいう。推進機関として内燃機関をもち,比較的小型軽量で高速を発揮する船。総トン数5トン,長さ5m程度の艇が多いが,長さ15~20mの大型ボートもある。大部分のモーターボートは,レクリエーションに使用されるプレジャーボートとして用いられるが,業務用艇として利用される場合も多い。
プレジャーボートには,比較的小型で,水上を走り回るという意味をもつランナバウトrunabout,比較的大型でクルージングに適したクルーザーや,さらに大型のモーターヨット,帆走もできるモーターセラーなどがある。ランナバウトには,オープンデッキで船外機を装着した形式が多く,操縦席から後方にはデッキをもたない。座席は4~5名の場合が多く,最大速力が30ノット前後の艇もある。さらに高速を出すボートとして,スポーツに適し簡単な屋根をもつスポーツボートや,時速60~90ノットを出すレーシングボートもある。
クルーザーとは,一般に寝泊り設備を有する艇である。簡単な居住設備をもつ艇をスポーツクルーザー(または,デークルーザー)といい,このほか,居住性を重視し走行中でもキャビン内から操縦できるキャビンクルーザー,外国で多く見られるハウスボート,魚釣り用としての設備をもつフィッシングクルーザーがある。スポーツクルーザーには,速力30ノット,航海距離1000kmの艇もある。
業務用としては,内水面などの漁業取締り,公害探知船,パトロールボート,救難艇,高速連絡艇として利用される。また,30ノット以上の速力を有する高速遊漁船もある。
モーターボートでは,航走速度によって艇体を支持している静的浮力と動的浮力(揚力)の割合が異なってくるため,設計速力に応じて,排水型,半滑走型,滑走型の船型の使い分けが必要となる。低速船や大型ボートなどのように,停船中でも航走中でも艇の喫水線があまり変わらない場合は,ほとんど静的浮力で支持されているため,排水型船型が適している。キールから玄側まで丸みをもった面で作られている単胴丸底型(ラウンドタイプ)は排水型の船型(図1-a)で,抵抗が少ない利点がある。
艇がある程度高速になり,速力V(単位ノット)と艇の長さL(単位フィート)の平方根との比(これを速長比という)が2程度になると,船底には動的浮力が働き,艇がもち上げられ,船体中央から後方の玄側を流れる水流がはがれて,半滑走状態で航走するようになる。さらに高速になると,玄側,船底ともにほとんど接水せず,後部船底のわずかな部分が接水するのみとなり滑走状態になる。一般に,速長比3付近から滑走に入り,速長比が5になると完全に滑走する。レーシングボートなどの小型高速艇は,ほとんど滑走型船型である。
代表的なボートの船型として角底型(ハードチャイン船型)がある。船底と玄側の面が交わる線をチャインchineと呼び,このチャインが前後にはっきりしている船型をハードチャイン船型と呼ぶ。高速になると,このチャインの効果により玄側の水きれがよくなり,船底のみが接水し動的浮力を受けやすくなるため滑走性がよくなる。代表的なチャイン船型は図1-bに示したV底船型で,船尾断面での船底傾斜角は15度前後である。この船型は船底がフラットに近いため滑走性能に優れ高速を出しやすいが,波浪中の性能は劣る。船底傾斜角を25度前後にした船型をディープV型と呼び,半滑走型の代表的な船型である。この船型は波に強く乗りごこちに優れており,対波衝撃も低く押えることができるため,外洋レースでも成果を上げている。また,従来,デッキ面積を広く取れることからハウスボートとして多く採用されてきた双胴型のカタマランボートは,最近では耐波性能も改善され,高速性能に優れるため外洋レーサーの主流船型となりつつある。
高速で接水面積をできるだけ減らして滑走性能を高めるためには,前後に2分割あるいは3分割された,階段状式の船底をもつステップハイドロプレーン船型(図1-c)や,船体両玄に張り出したスポンソンと船尾船底の3点で支持され高速滑走するスリーポイントハイドロプレーン船型が用いられる。
エンジンおよび推進装置の配置により,船外機(アウトボードエンジン),船内外機(インボード・アウトドライブエンジン)と船内機関(インボードエンジン)の3種に大別される(図2)。船外機は長さ6m以下クラスの小型ボートに多く用いられ(この形式のモーターボートを船外機艇ともいう),船体船尾部の外側に取り付けられる。2サイクルガソリンエンジンを用いるのがふつうで,エンジンの下部にドライブ機構が装着されており,船外機全体を回転させることにより船を旋回させる。小型では1馬力から,大型で150馬力の船外機がある。船内外機は,エンジン本体が船尾船体内に据え付けられ,ドライブユニットは船外にあってプロペラを回転させる形式であり,スターンドライブともいわれる。4サイクルガソリンエンジンが多く,100~300馬力くらいである。長さ10m以下クラスの中型ボートに多い形式である。船内機関は,エンジンが船内中央付近に据え付けられ,船内を通るプロペラ軸によってプロペラを回転させるものであり,大型船と同じ形式である。長さ10mクラス以上の大型ボートに多く用いられる。船外機や船内外機の場合には,舵を設ける必要はないが,船内機関の場合には舵が必要となる。
推進方法としては,スクリュープロペラが大部分であるが,最近では船底から吸引された水をポンプで加速し,船尾から噴出するウォータージェット推進(ジェット推進船)も採用されている。また,従来大型ボートに使用されていたディーゼルエンジンとスターンドライブを組み合わせたシステムが小型のプレジャーボートにも採用されつつある。
モーターボートの船体材料としては,木,耐水合板,鋼,軽合金,FRP(強化プラスチック)などがあるが,最近のボート材料の主力はFRPである。FRPは軽量で強度が高く,耐食性にも優れ量産に適している。FRP艇の工作には,FRP製の雌型の内部にFRPを積層して艇体を作る工法が採用されるが,塩化ビニルフォーム(PVCフォーム)を仮型に張り付けて,その両面にFRPを積層するサンドイッチ工法もある。外国では,接着構造の木製の大型艇も多く作られている。レーシングボートなどには軽量の耐水合板を使用している場合が多い。小型船の強度は,2~3m高さから艇体を水面に落下させて試験する。
モーターボートの運転には,少なくとも小型船舶操縦士の免許が必要である。総トン数20トン未満の小型船の運転は,艇の航行区域によって1級または2級の小型船舶操縦士の資格が必要である。
執筆者:国武 吉邦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ガソリンエンジンなどの内燃機関で推進する比較的高速の小型舟艇をいう。滑走艇と排水量型に分類する。滑走艇はなるべく重量を軽くし、大馬力の推進機関によって高速を得、船底に作用する揚力を利用して前部の船底を水面上に露出し、後部船底を水面に接して飛ぶように滑走する。競走艇、高速のレジャーボートなどがある。長さ10メートルぐらいまではランナバウトrunaboutとよばれることもある。排水量型は、比較的速力が低く揚力は無視できる程度で、つねに浮力と重力がつり合っている。大部分のモーターボートはこの型式である。離島航路などの高速旅客艇、海上保安庁の巡視艇、水上警察の警備艇、地方自治体の漁業取締船、クルージング用のモーターヨット、交通艇、遊漁船、レジャーボートなど広範囲に使われている。滑走するほど速くはないが、25ノットから30ノットぐらいの船もある。内燃機関で推進する小型舟艇のうち、艀(はしけ)や土運船のような低速の貨物船はモーターボートとはよばない。
エンジンの装備形態からは船外機outboard motorと通常の船内装備とに分けられる。小型・軽量のディーゼル機関をプロペラ、舵(かじ)と一体化し、船尾後方の船外に脱着できる構造にした船外機は、レジャーボートなど比較的高速の小型艇に広く採用されている。
第二次世界大戦後、1960年代中ごろから、技術の発達に伴って、モーターボートに似てはいるが従来とはまったく異なる方式の船が現れた。船体浮揚方式が異なる水中翼船、ホバークラフト、半没水船、推進方式が異なるウォータージェット船、エンジンが異なるガスタービン船などである。これらの新しい形式の船は、あるいはモーターボートを超える性能によってそれにかわり、あるいは新しい用途を開いて船舶技術の可能性を広げている。
[森田知治]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…スキーをはき,モーターボートにつけた引綱で引かれて,水面を滑走する水のスポーツ。現在のような水上スキーの原形は,1920年代にアメリカで創案され,フランスを中心にヨーロッパでも行われるようになった。…
…モーターボートで速度を競うスポーツ。使用するボートによって,船外機か船内機かで大別され,それぞれ排気量によってクラス分けされる。…
※「モーターボート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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