リサイクル(読み)りさいくる(英語表記)recycle

翻訳|recycle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リサイクル」の意味・わかりやすい解説

リサイクル
りさいくる
recycle

日常生活において発生する不要物や産業活動に伴い副次的に得られた物品を、資源として再生利用、あるいは有価物を回収・再生して有効利用すること。紙ごみから再生紙をつくることや、空き缶を回収し、ふたたび空き缶として再生利用することなどがリサイクルの例としてあげられる。

[田中 勝]

集団回収

市町村による分別収集以外の資源回収方法として、市民団体による自主的な資源回収活動がよく実施されている。こうしたボランティア団体(地域団体、PTA、子供会、老人会など)による資源回収を「集団回収」という。こうした回収では、新聞、雑誌、アルミ缶などのリサイクル資源を回収し、得られた収入を団体の活動資金として活用している。また多くの市町村では、集団回収によって回収された資源ごみの量に応じて報奨金を交付して、市民の自主的活動を支援している。

[田中 勝]

リサイクルの現状

日本のリサイクルでは、小売業者による流通段階での資源回収が大きな役割を果たしてきた。その代表例として、ガラス瓶、ボタン型乾電池などがある。また回収・再生業者の存在もリサイクルに大きな役割を果たしている。その例として古紙や中古繊維の回収などがあげられる。現在では、資源ごみの分別収集を行っている自治体も数多くなり、市民は資源化可能なものを他のごみと分けて排出し、資源化を効率よく行っている。家庭から排出されるもののなかで再資源化が進んでいるのは、古紙、ガラス瓶、アルミ缶、スチール缶、ペットボトルなどである。

 市町村において分別収集や中間処理により資源化された量は670万トン、住民団体によって資源回収された集団回収量は280万トン、両者を合わせたリサイクル率は約21%で、年々上昇している(2009年度)。

 日本では個々の品目については、いろいろな政策により利用率や再資源化率の目標を高く設定することによって、減量化・資源化を促進している。自治体によっては市民が不要になったものを交換したり、バザーを行ったりする場として、リサイクルセンターを設置しているところもある。このリサイクルセンターでは、不要品を市民自ら修理・再生できるような設備・施設を提供しており、この施設を拠点にして資源保全、環境保護の意識啓発を行い、ごみの減量化・資源化を推進している。また、デポジット制度(販売時に回収保証金を上乗せして、空き容器を持ち込んだときにそれを返却する制度)を導入している自治体もわずかにある。

 品目別のリサイクル率は、ガラス瓶が97%(カレット利用量/ガラス瓶生産量。カレットとは、ガラス瓶を細かく砕いて瓶の原料用に加工したもののこと)、スチール缶が89%(再資源化重量/消費重量)、アルミ缶が93%(再資源化重量/消費重量)、ペットボトルが51%(分別収集量/生産量)となっており(2009年度)、年々高まってきている。また焼却施設の余熱利用の状況は、2009年度において温水利用727施設、蒸気利用238施設、発電301施設と、数多くの施設が余熱利用をしている(データ出典は平成23年度環境白書による)。

[田中 勝]

リサイクルの課題

環境・資源問題に対して市民の関心が高まり、市民団体による資源ごみの回収量が急増している。その結果として、資源ごみの需要に対して供給量が過剰となり、回収物が売却できず、雑誌やガラス瓶などでは引き取り料を支払う逆有償という現象が起きている。これにより回収された資源ごみの一部が有効に利用されることなく廃棄物として処分される例も報告されている。有限な資源を将来にわたって持続的に利用していくためには、資源ごみの需要の拡大は必須(ひっす)であり、資源ごみの有効利用に向け、今後は経済性など種々の要因を考慮にいれたうえで、リサイクルシステム構築し、充実させていく必要があろう。

[田中 勝]

リサイクル法

資源の有効利用、廃棄物の発生抑制および環境の保全を目的として、リサイクルを促進するための措置を定めた「再生資源の利用の促進に関する法律」(通称、リサイクル法)が、1991年(平成3)10月より施行された。その後、「資源の有効な利用の促進に関する法律」に改正され、2001年(平成13)4月に施行された。本法は、リデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)の考え方を取り入れ、事業者がこれらの取り組みを進めることを目的としている。

[田中 勝]

容器包装リサイクル法

一般廃棄物のなかで相当部分を占め、再生資源としての利用が可能な容器包装についてリサイクルを促進することを目的とする「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(通称、容器包装リサイクル法)が、1995年(平成7)6月16日制定された。同法は容器包装について、消費者、市町村、事業者のそれぞれが責任を分担することにより、それぞれが容器包装のリサイクル推進に積極的に取り組む社会システムの構築を目ざすものである。消費者については、市町村が行う分別収集に協力(分別排出)すること、また、特定容器(再商品化義務の対象となる容器)を利用する事業者、特定容器を製造または輸入する事業者および特定包装を利用する事業者(これらを「特定事業者」という)は、市町村が分別収集した容器包装廃棄物を、その使用量や製造量等に応じて、再商品化を行う義務を負うこととなっている。

[田中 勝]

家電リサイクル法

大きすぎたり重すぎたりして処理が困難な家電製品のリサイクルをメーカーに義務づける「特定家庭用機器再商品化法」(通称、家電リサイクル法)が、1998年(平成10)6月5日に公布され、2001年(平成13)4月に施行された。テレビ(ブラウン管式、液晶・プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機、エアコンの4品目が対象となった。小売業者は消費者から廃家電を引き取り、最終的に製造業者が引き取り・再商品化(リサイクル)を実施する。なお、消費者は収集およびリサイクルに必要な費用を支払うこととなっている。

[田中 勝]

自動車リサイクル法

使用済自動車の適正処理とリサイクルおよび再資源化を推進し、環境を保全、循環型社会をつくることを目的として「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(通称、自動車リサイクル法)が、2002年(平成14)7月に公布され、段階的な施行を経て2005年1月に完全施行となった。使用済自動車のリサイクルと適正処理において、自動車メーカー、輸入業者、販売者、解体業者など自動車関係業者の役割と義務を定め、また消費者にもリサイクル料金の支払いを義務づけている。とくにシュレッダーダスト(自動車粉砕くず)、フロン類、エアバッグ類、という3品目について、適正処理を定めている。また、電子マニフェスト制度(電子システムによる情報管理制度)が導入され、使用済自動車が1台ずつ一貫して電子ネットワーク上で管理されるため、不法投棄の減少が期待される。リサイクル料金と電子マニフェストの管理は、「公益財団法人自動車リサイクル促進センター」(経済産業省、国土交通省、環境省共管)が行う。

[田中 勝]

『経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課編『資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律)の解説』(2004・経済産業調査会)』『田中勝著『新・廃棄物学入門』(2005・中央法規出版)』『寄本勝美著『リサイクル社会への道』(岩波新書)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リサイクル」の意味・わかりやすい解説

リサイクル
recycle

廃棄物を回収して再利用すること。アルミ缶やスチール缶を溶かしてアルミニウムや鉄に再生したり,古紙をパルプに戻して新しい紙にするなど,原料として使うことを再生利用といい,これが本来のリサイクルの意味である。ビールびんなどを洗って繰り返し使ったり,中古品として再利用するなど,元の製品をそのまま使うことを再使用(リユース)という。また,ごみ処理施設で発電を行なったり,木くずなどを燃料として利用するなど,熱エネルギーとして利用することを熱回収(サーマルリサイクル,サーマルリカバリー)といい,これも広い意味ではリサイクルの一つである。日本では古くからさまざまなリサイクルが行なわれ,金属や紙くずはもとより,生活に伴って排出されるあらゆるものが資源として回収されてきた。今日では各家庭から出る不用物を効率的に回収する仕組みとして,地域での集団回収や市町村による資源分別収集(行政回収)などが行なわれている。また「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)や特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法),「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)など,さまざまなリサイクルに関連する法律があり,これらの法律の上位法として,リデュース(ごみの削減),リユース,リサイクルを推進する循環型社会形成推進基本法が制定されている。なお,購入時からごみの出にくい,または再利用しやすい資源を使った商品を選ぶプレサイクルの概念も浸透し始めている。(→ごみ

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報