日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘッブ」の意味・わかりやすい解説
ヘッブ
へっぶ
Donald Olding Hebb
(1904―1985)
カナダの心理学者。ノバ・スコシア州チェスターの生まれ。1932年マックギル大学で修士をとり、高・小学校の教職についたが重病にかかり、その間ウィリアム・ジェームズ、フロイト、ラシュレーなどの心理学書を読み、アメリカのシカゴ大学のラシュレーのもとで生理学的心理学の研究をする。1936年ハーバード大学で学位をとり、フロリダのヤーキズ霊長類生物学研究所、モントリオールの脳外科医ペンフィールドWilder Graves Penfield(1891―1976)の病院を経て、1947年からマックギル大学心理学教授となる。知覚、記憶、学習、思考などの神経生理学的研究を土台にして包括的な行動理論を提出し、経験の反復は大脳に特殊な循環回路をもつ細胞集成体を生じさせ、それらが位相連鎖をなして知覚や思考を促進させると主張した。著書に『The Organization of Behavior』(1949)、『A Textbook of Psychology』(1972。邦訳名『行動学入門』)、自伝『Focus on Meaning』(1980)などがある。
[宇津木保]
『白井常監訳『行動学入門――生物科学としての心理学』改訂版(1970・紀伊國屋書店)』▽『D・O・ヘッブ著、白井常他訳『心について』(1987・紀伊國屋書店)』