モントリオール(読み)もんとりおーる(英語表記)Montreal

翻訳|Montreal

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モントリオール」の意味・わかりやすい解説

モントリオール
もんとりおーる
Montreal

カナダケベック州南部、セント・ローレンス川左岸のモントリオール島に位置する港湾都市。フランス語名モンレアル。人口103万9534、大都市圏人口321万5665(2001)。カナダを代表する都市で、商業、貿易、金融の中枢であると同時に、水路、鉄道、航空路線が集中する交通の要地でもある。河口より1600キロメートルも内陸にある河港で、五大湖地方と大西洋を結ぶ中継地として発達した。小麦、木材、酪製品、毛皮などを輸出するカナダ第一の貿易港で、とくに小麦の輸出高は世界第1位である。各種工業も盛んで、機械、織物、電気、毛皮製造、ゴム工業などが発達する。また、舟運交通の要衝のため造船および船の修理工場が川岸や運河沿いに多くみられる。港の面積は4800ヘクタールで、あらゆる近代港湾施設をもつが、冬季結氷することが最大の欠点。

[山下脩二]

歴史

1535年、フランスの探検家カルチエが、セント・ローレンス川を遡行(そこう)してホシェラガに到達、そこの小山をマウント・ロイヤル(王の山)と名づけたのがモントリオールの発祥であり、町の名称もこの山に由来する。1611年フランス人シャンプランが建設、毛皮の取引中心地、および内陸探検の拠点としてフランスの植民地であった。1642年にメゾンヌープ侯の率いる一団が入植し、フランスの植民基地として発展したが、絶えず先住民のイロコイ人と紛争が起きていた。フレンチ・アンド・インディアン戦争の結果1760年にイギリスに譲渡されたが、現在でもフランス系カナダ人が64%を占め、イギリス系は18%である。このため英語とフランス語が並んで用いられているが、市民の63%はカトリック教徒で、日常語はフランス語が用いられ、フランス系カナダの中心地でもある。また、1844~49年は連合カナダ植民地の首都であった。市内中央にはマウント・ロイヤルがあり、広大な公園は町のシンボルとなっている。ダウンタウンには整然とした市街地が広がり、図書館、博物館、教会、公園などの文化施設もよく整備されている。教育面ではイギリス系のマッギル大学とフランス系のモントリオール大学が有名である。精神的・文化的にはフランス系カナダの中心であるが、1967年開催の万国博覧会を機にアメリカ大リーグナショナル・リーグ)のエクスポズ(2005年にアメリカのワシントンDCへ移転。現ワシントン・ナショナルズ)のフランチャイズが置かれ、76年には第21回オリンピックが開催されるなど、経済活動は非常に活発で、カナダのニューヨークとも称され、第一級の国際都市である。

[山下脩二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モントリオール」の意味・わかりやすい解説

モントリオール
Montreal

カナダケベック州南部にある都市。フランス語では Montréal。セントローレンス川オタワ川の合流点,モントリオール島に位置する。フランス語圏ではパリに次ぐ世界第2の都市とされ,市民の 3分の2をフランス系が占める。フランス系市民は主として東部,イギリス系市民は西部に居住。1月の平均気温は-9℃,冬季の積雪 2.5m。1535年ジャック・カルティエが訪れ,1642年に伝道地として開かれた。18世紀前半から周辺部への農業植民が進み,開拓者や交易商人の根拠地として発展した。19世紀初頭にはケベックとの間に水路が開かれ,銀行が設立されるなど都市機能の基礎が築かれた。市街地の拡大に伴い,20世紀中頃にはモントリオール大都市圏を設定し,周辺の諸都市と広域行政を行なった。1959年アメリカ合衆国の五大湖と大西洋を結ぶセントローレンス水路の開通によって,カナダ最大の港湾都市となり,鉄道,道路,空路交通の重要な中心地ともなっている。広大な地下商店街をもち,南西のトロントとともにカナダの経済,工業の中心を形成。石油精製,石鹸,醸造・蒸留,木材,皮革などの工業が発達。フランス語系のモントリオール大学(1876創立),英語系のマギル大学(1821創立)などがある。ノートルダム教会(1829)などの古い教会も多く,教育,文化の中心でもある。国際民間航空機関 ICAOが所在。1976年第21回オリンピック競技大会開催地。人口 164万9519(2011)。

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