学位の一種。イギリス、アメリカではマスターMaster(M.A.; M.S.)、フランスではメトリーズMaîtrise。Ph.D.(博士号、Doctor of Philosophy)その他の専門職の博士よりは下位の中間学位。この学位は、中世パリ大学における教師ギルドへの入会資格である教授免許状マギスターMagisterに由来する。中世ボローニャ大学のドクターDoctorと同格とされ、Master、DoctorおよびプロフェッサーProfessorは、すべて同義語に用いられた。17世紀以後のイギリスをはじめ、初期アメリカでも学士取得後研究を3年続ければ自動的に授与される名誉学位となり、1858年にミシガン大学で1、2年の課程履修に対して授与される取得学位となった。日本では、大学院の標準修業年限2年の修士課程、または標準修業年限5年の博士課程の前期2年の課程修了者に修士の学位が授与される。なお、専門職大学院修了者に授与される専門職学位にも修士(専門職)という名称が用いられている。
[金子忠史・江原武一]
修士(マスター)は,学士と博士(ドクター)の間に位置するが,中世大学ではドクターとマスターは同義語であり,教師を意味した。いつのころからか法学・医学・神学の下位にあたる教養学部でマスターが使われるようになったが,大学院の学位としてマスターが定着するのは20世紀のアメリカ合衆国であった。大学院教育がカレッジ教育から分離し,バチェラー(学士)とドクターの違いが明確になるに伴い,マスターの位置づけも固まっていった。日本では,第2次世界大戦前に修士はなく,戦後アメリカの制度を参考に導入された。戦前形骸化していた大学院を,スクーリングを行う教育組織へと変えるために修士課程(日本)が置かれたのである。さらに1955年(昭和30)の大学院基準の改正で修士課程が高度な職業教育を行うところとされ,60年代に工学系での修士課程が大きく拡大したが,人文・社会科学系では修士号は実質的には大学教員資格として機能した。だが1980年代後半からの大学院拡大で人文・社会科学系の修士も増え,また2003年(平成15)の専門職大学院制度(日本)創設により修士(専門職)も始まり,高度専門職業人のための学位としての修士の役割が拡大しつつある。
著者: 阿曽沼明裕
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…専門的な学問を修得したこと,あるいは学術上の創造的業績をあげたことを証明するために,大学または国家が与える称号。日本では学士,修士,博士(はくし)の三つがある。
[沿革]
博士をはじめとする学位制度の起源は中世ヨーロッパの大学にある。…
※「修士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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