日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘンゲボヤ」の意味・わかりやすい解説
ヘンゲボヤ
へんげぼや / 変化海鞘
[学] Polycitor proliferus
原索動物門尾索(びさく)綱腸性目ポリキトリ科の群体ボヤ。広さ20ミリ×10ミリ、厚さ6ミリ程度までの小塊状群体をつくる。共同外皮は寒天状であるが強靭(きょうじん)で半透明。個虫の入水孔と出水孔はそれぞれ平滑な群体表面に開く。生時、表面のとくに両孔周辺は青白色となるが、保存標本では消失する。個虫は細長く、鰓嚢(さいのう)と囲鰓腔(いさいこう)とを含む胸部と胃腸を含む腹部とが前後に区別される。鰓孔は六列、胃には20~30縦褶(じゅうしゅう)がある。生殖腺(せん)は成熟すると腹部の後方に短く突出するが、心臓などは腹部にとどまる。日本を中心に、ホヤをスライドグラスに付着させて飼育し、発生学的研究やそのほかの研究に使うことが現在盛んであるが、それが初めて本格的に行われたのが本種である。その結果、腹部が横にいくつかにくびれ、そのおのおのが新しい個虫になることが明らかになった。また、いくつかの個虫がその周囲の共通外皮とともに群体を離れ、別の場所で新たに群体をつくる群体出芽とよばれる現象も初めてみつけられた。相模(さがみ)湾以南の太平洋岸から台湾にかけて、潮間帯からごく浅い所の転石の下面や岩盤の側面などにみられる。オーストラリア周辺海域から報告されている本種の記録は疑義があり、再検討の余地がある。
[西川輝昭]