イギリスの作家サッカレーの長編歴史小説。1852年刊。貴族の庶子として生まれたヘンリー・エズモンドの成長と、恩人カースルウッド卿(きょう)夫人レイチェルに抱く尊敬と感謝とがしだいに恋心へと変わっていく心理過程を中心として、17~18世紀のイギリスの社会、風俗をみごとに描く。結ばれた2人は新天地アメリカへ移住する。続編として、その子孫の生活を描いた『バージニアの人々』(1857~1859)がある。作者が友人の妻に抱いた実らぬ恋を、ここで美化し成就させている点でも興味深い。
[小池 滋]
『村上至孝訳『ヘンリー・エズモンド』(1949・新月社)』
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…このころ妻が発狂し,一生を病院で送ったため,以後ひとりで2人の娘を育てた。1847年から48年にかけて分冊発行した《虚栄の市》によって一躍大作家として認められ,続いて俗物的社会の誘惑に迷いながらも母と婚約者の清純な愛に救われる青年の物語《ペンデニス》(1848‐50),18世紀の一紳士の回想録という形をとった歴史小説《ヘンリー・エズモンド》(1852),再び俗物社会の中で真の人生を生きようとするドン・キホーテ的な父と,画家を志すその息子を描く《ニューカム家の人びと》(1853‐55)を発表し,揺るぎない作家的地位を固めた。そしてクラブでの有名人との交際を楽しみ,友人の妻ブルックフィールド夫人にプラトニックな愛情をささげたりした。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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