日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベツィグ」の意味・わかりやすい解説
ベツィグ
べつぃぐ
Eric Betzig
(1960― )
アメリカの物理学者。ミシガン州に生まれる。1983年、カリフォルニア工科大学物理学科を卒業後、コーネル大学で応用物理学と基礎工学を学び、1985年に修士号、1988年に博士号を取得した。その後ベル研究所の半導体物理学研究部門で研究していたが、1996年に彼の父であるロバート・ベツィグRobert Betzigが経営していた企業の研究開発部門の副所長となった。しかし研究開発や事業はうまくいかず、解像度の高い顕微鏡を開発するために研究現場に戻った。2006年にハワード・ヒューズ医学研究所のジャネリア・ファーム研究キャンパスでグループ・リーダーとなり、超高解像度蛍光顕微鏡技術の開発に取り組んだ。
顕微鏡下で1個の分子のふるまいを見るには、200ナノメートル以下を識別しなければならない。蛍光分子を光らせて観察しても近接する分子が200ナノメートルより短いと蛍光が重なり合って正確な位置がわからない。しかし、全体に光を当てるといくつもの蛍光分子が光る。これを繰り返して光った位置を記録して最後に重ね合わせると全体像が浮かび上がる。ベツィグはこの手法で蛍光顕微鏡の開発に貢献した。これにより、神経細胞などの小さな分子を生きたまま観察できるようになり、パーキンソン病やアルツハイマー病などの難病の仕組みの解明に道を開いた。2014年「超高解像度の蛍光顕微鏡の開発」の業績で、ウィリアム・モーナー、シュテファン・ヘルとともにノーベル化学賞を受賞した。
[馬場錬成 2015年2月17日]