他の諸分野への応用を目的とした物理学および、物理学の他の諸分野への応用をいう。物理学は自然の基礎的な原理、法則の探究を目的としているので、必然的にその結果は他の基礎科学の諸分野および工学その他への応用に関係づけられる。
物理学の発達の初期においては、物理学は他の関連分野、たとえば化学や工学とそれほど明瞭(めいりょう)に分化してはいなかった。電磁気学の基礎法則である電磁誘導の法則を発見したイギリスのファラデーは電気化学の研究も行ったし、その電磁誘導の法則は発電機の原理として電気工学の基礎ともなった。その後科学、工学はその進歩とともに多様に分化し現在に至っている。現在では電気工学、機械工学などのようにすでに一つの分野を形成している諸工学は、歴史的には物理学の応用といえる面も多いが、応用物理学の区分のなかには入れない。現在応用物理学とよばれるのは、物理学のなかの応用を意図した分野であり、また、物理学の応用面を扱っていながらまだ独立した分野をなしていない部分である。このように応用物理学は本質的に学際的な学問分野であり、また、物理学の新しい展開の芽となるものである。
[和田八三久・西 敏夫]
日本で応用物理学の始まった時期は古い。しかしそれがはっきりわかる形で初めて世に現れたのは1932年(昭和7)、応用物理談話会刊行の雑誌『応用物理』においてであろう。この雑誌はその後第二次世界大戦中も刊行が続けられ、戦後、46年(昭和21)に社団法人応用物理学会が創立されるとともに、その機関誌となった。応用物理学会の会員数は55年の約2000名から2002年(平成14)の2万名をかなり上回る数へと激増し、日本での応用物理学の発展を物語っている。同学会は他の関連諸学会とともに春季の応用物理学関係連合講演会、および同学会独自の秋季の応用物理学学術講演会を開催している。これらの講演会から、日本の応用物理学の分野をみてみると、(1)放射線・プラズマ、(2)計測・制御、(3)光、(4)量子エレクトロニクス、(5)真空・薄膜(はくまく)・表面、(6)荷電ビーム、(7)有機エレクトロニクス、(8)半導体、(9)結晶工学、(10)超伝導、(11)応用物理一般などがあげられる。応用物理学会以外にも応用物理学に関連した学協会は多い。
また、応用物理学会と日本物理学会の共同の事業として欧文専門誌『Japanese Journal of Applied Physics』が1962年より発行されている。このような応用物理学の研究の発展と並行して、全国の諸大学に応用物理学を専門とする学科が多数設置され、学生の教育と研究にあたっている。これらの学科は多くの場合、工学部のなかにあるが、理工学部、理学部に置かれている場合も少なくない。これは応用物理学の性格を物語るものである。
[和田八三久・西 敏夫]
アメリカ、ヨーロッパその他諸外国においても、応用物理学の重要性は強く認識され、その研究・教育は活発である。たとえばアメリカでは、アメリカ物理学会によって『Physics』が1931年に創刊され、のち『Journal of Applied Physics』と改称されて現在に至っている。ヨーロッパでは、イギリスにおいては『British Journal of Applied Physics』(現在の『Journal of Physics, D』)が50年より発刊されている。ドイツにおいては旧西ドイツで『Zeitschrift für Angewandte Physik』が48年から72年まで、『Applied Physics』が73年以降発行され、現在も続いている。そのほか応用物理関係の学術誌は多い。
[和田八三久・西 敏夫]
『応用物理学会編『応用物理用語大辞典』(1998・オーム社)』▽『応用物理学会編『応用物理ハンドブック』第2版(2002・丸善)』▽『早稲田大学理工学部応用物理学科著『応用物理の最前線――エジソン効果から超高速現象まで』(講談社・ブルーバックス)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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