改訂新版 世界大百科事典 「ベネチテス」の意味・わかりやすい解説
ベネチテス
bennettites
中生代に限って生存した植物で,ソテツ綱ベネチテス目Bennettitalesの総称。葉の形は化石や現生のソテツ目に属する植物ときわめてよく似ていて,外見だけでこれらを区別することは困難である。ベネチテス目に属する植物の葉やその他の器官の気孔は,孔辺細胞の外側に1対の助細胞があるだけで,孔辺細胞のまわりに数個の助細胞のあるソテツ目とは完全に区別される。またベネチテス目に属する植物の各器官の細胞壁は一般に著しく屈曲するが,ソテツ目のそれは直線的である。花は雌雄両全花または単性花で,多数の包葉で包まれ,一般に葉腋(ようえき)または枝の分枝点につく。胚珠は有柄で,円錐形,筒形またはドーム状の花床の表層一面につき,それらの間には無数の種間鱗がある。花粉を生じる器官(おしべ)は花床の基部に輪生し,羽状に分枝するか,または全縁で,多くのカプスル(蒴果(さくか))状の小胞子囊(花粉囊)をつける。
この植物は,はじめはソテツ目と同類のものと考えられたが,20世紀になってから,葉の表皮細胞(気孔を含む)や花の構造が明らかになるのにつれて,同じソテツ綱には属するが,ソテツ目とは分類上かなり類縁性のうすい植物であることが明らかとなった。
この植物(目)には,キカデオイデアCycadeoidea,ウィリアムソニアWilliamsonia,プテロフィルムPterophyllum,オトザミテスOtozamitesをはじめ多くの属が知られている。中生代はソテツの時代といわれるが,実はその大部分はこのベネチテス目に属する植物である。
執筆者:木村 達明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報