改訂新版 世界大百科事典 「ペトルスダミアニ」の意味・わかりやすい解説
ペトルス・ダミアニ
Petrus Damiani
生没年:1007-72
イタリアのベネディクト会修道士,教会改革者,聖人。ラベンナに生まれ,1035年フォンテ・アベラの修道院に入り,43年ころその院長となる。のちにしいられてオスティアの司教となった(1057)。叙任権闘争の始まりつつある時代にあって,ペトルス・ダミアニはアタナシオスの《アントニウス伝》に心を寄せ,修道士にとってたいせつなことは司牧活動よりはむしろみずからの霊的進歩であると主張した。聖職者が世俗の皇帝から叙任されることは〈聖職売買〉にほかならないとしてこれを弾劾し,そのような聖職者の授けるサクラメントの無効を主張したほか,修道院の規律を厳格にした。神学においては当時の人文主義的傾向に反対し,論理学や弁証法が神学のなかに入り込むことをしりぞけて,これらはいわば〈主人の侍女〉にすぎないと述べた(《神の全能について》)。〈神学の侍女〉というスコラ学のモットーはこれに由来する。
執筆者:泉 治典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報