改訂新版 世界大百科事典 「聖職売買」の意味・わかりやすい解説
聖職売買 (せいしょくばいばい)
サマリア人シモン・マグスが使徒ペテロとヨハネに対して,金銭を提供することによって聖霊の降下を依頼したという《使徒行伝》(8:18~24)の故事にちなみ,ラテン語ではシモニアSimoniaと言う。シモニアとは本来,霊的な事がらや神聖な事がらを金銭その他の手段によって獲得することを意味し,贖宥(しよくゆう)状(免罪符)取引なども含められていたが,一般的には教会や修道院の聖職を売買する行為をさす。ゲルマン的私有教会制のもとでは,国王は自己支配下の教会・修道院の聖職者を自ら任命し,それに対する対価を求めていた。このような俗人による聖職者任命は腐敗を生み,教会改革運動においてこれも聖職売買として攻撃の的とされた。教皇グレゴリウス7世による聖職叙任権闘争もその一環である。宗教改革前夜には,教皇による聖職任命にあたって徴収された一定の貢租も聖職売買とみなされ,ウィクリフやフスらの改革者たちによって激しい批判をあびた。
執筆者:森田 安一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報