ホテイエソ(その他表記)Photonectes albipennis

改訂新版 世界大百科事典 「ホテイエソ」の意味・わかりやすい解説

ホテイエソ
Photonectes albipennis

ワニトカゲギス目ホテイエソ科の深海魚。下あごの先端に発光器を備えたひげが1本ある。体は細長く円筒状に近い。ひげの発光器で餌を誘い,自分と同じくらいの大きさの魚でも鋭い歯で捕食し丸のみにする。歯は口の内側方向にだけ倒すことができ,一度とらえた餌を逃しにくくしている。このような捕食習性で餌の少ない深海によく適応している。眼の直前に細長い大きな発光器があり,体側の下側と腹面に沿っても点状の発光器列がある。背びれしりびれは体の最後部にあって相対する。腹びれは体の中心より後にある。体にうろこがなく体色は黒色または黒褐色でビロードのような色調をもつ。太平洋北西部の温・熱帯域の深海に生息するが,ときには夜間表層付近で採集されることもある。体長30cmに達する。ホテイエソ科Melanostomiatidaeの魚類は全世界から約90種が,日本近海から約30種が知られている。いずれも深海性でホテイエソと似た体型をもつ。
深海魚
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホテイエソ」の意味・わかりやすい解説

ホテイエソ
ほていえそ / 布袋狗母魚
scaleless black dragonfish
[学] Photonectes albipennis

硬骨魚綱ワニトカゲギス目ホテイエソ科に属する海水魚。ホテイエソ科の魚は世界の深海に広く分布し、16属90種以上もいる。ホテイエソは相模(さがみ)湾以南、小笠原(おがさわら)諸島、パラオ海嶺(かいれい)などの西太平洋から報告されている。体は黒色の皮膚で覆われている。胸びれがない。背びれと臀(しり)びれの鰭条(きじょう)は皮膚で覆われず明瞭(めいりょう)である。ひげは頭長より短い。その球状体に2本の黒い糸状の付属物がある。下顎(かがく)は上顎より長い。歯は一列で鋭い。

[上野輝彌]

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