ボネリムシ(その他表記)Bonellia fulginosa

改訂新版 世界大百科事典 「ボネリムシ」の意味・わかりやすい解説

ボネリムシ
Bonellia fulginosa

ボネリムシ科のユムシ動物。本州中部以南,地中海に分布し,死んだサンゴ礁の中に穴を掘ってすむ。雌雄で体の大きさが極端に異なっていて,雌は体長20mm,幅7mm,そして体長の2~2.5倍の長さの吻(ふん)をもつのに対し,雄は体長1mm,幅0.15mmで腹面に繊毛が密生する。雌の体は濃緑色で1対の腹剛毛をもち,吻の先端は大きく二叉する。雄は雌の咽頭中に寄生生活していて,体の前方に1対の腹剛毛があり,体の前端に生殖口が開いている。受精卵から孵化(ふか)した幼生が,そのまま海底生活をすると大きな体の雌になり,幼生が雌の体に付着して過ごすと雌の体の分泌物によって雄になる。したがって雌の体についている時間をかえることによって,いろいろな間性をつくることができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボネリムシ」の意味・わかりやすい解説

ボネリムシ
ぼねりむし
[学] Bonellia fuliginosa

環形動物門ユムシ綱ボネリムシ科に属する海産動物。千葉県以南に分布し、死んだサンゴ礁に穴を掘ってその中にすむ。雌は体長約2センチメートルの濃緑色で、頭の頂端から体長の約2、3倍の長さの吻(ふん)を出し、その先端は二またに分かれている。1対の腹剛毛がある。一方、雄は非常に小さく、体長1ミリメートルぐらいで吻も口も血管もなく、雌の咽頭(いんとう)中に寄生している。背面クチクラが厚く、腹面には繊毛が密生している。1個の大きい貯精嚢(ちょせいのう)があり、精子細管を通って雌の子宮内の卵を受精させる。このように生殖に役だつだけの小さい雄を補雄とよんでいる。受精卵から幼生になり、その幼生が雌の親の吻について成長すると、しだいに雄になっていき、吻につかないで自由に浮遊生活をして変態すると大きな体の雌になる。実験的に雌の吻についた幼生を途中で離して飼育すると、付着していた場所や時間の長さなどによって、いろいろな程度の雄と雌の中間の性質をもった個体ができる。つまり、吻についていた時間が長いほど雄の性質の強い個体ができることから、雌の吻からは幼生を雄にする物質が出るのであろうと考えられている。

[今島 実]

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百科事典マイペディア 「ボネリムシ」の意味・わかりやすい解説

ボネリムシ

ボネリアとも。ユムシ類ボネリムシ科の環形動物。雌雄によって大きさ,形態が著しく異なる。雌の体長は約2cmで,先端が二叉(ふたまた)に分かれた体長の約2〜2.5倍の吻(ふん)をもち,緑色。雄は体長約1mmで,雌の咽頭中に寄生している。幼生が雌の体に付着して過ごすと雄になり,付着しないで成長すると雌になる。本州中部以南と地中海に分布し,死んだサンゴ礁の中に穴を掘ってすむ。
→関連項目ユムシ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボネリムシ」の意味・わかりやすい解説

ボネリムシ
Bonellia fulginosa

環形動物門ユムシ綱ボネリムシ科。独特の性決定を行うことで知られる。すなわち,受精卵が孵化してできた幼生は,しばらく海水中を泳いでいるが,その後海底で生活を始めたものは雌に,雌の体に付着したものは雄になる。雌は体長 2cm,体幅 0.7cm内外で,体長の2倍ほどの吻をもっている。体色は濃緑色で,ボネリン bonellinと呼ばれる色素をもつ。一方,雄はきわめて小さく,体長 0.1cm内外で,雌の咽頭内で寄生生活をする。日本南部の海で採集される。

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世界大百科事典(旧版)内のボネリムシの言及

【性比】より

…性の決定が環境に左右される場合は性比がかたよる。たとえば,海産のボネリムシBonelliaの幼生は単独では雌に発生するが,雌が存在すると吻(ふん)に付着して雄になる。サンゴ礁魚のホンソメワケベラは1匹の雄と数匹の雌と数匹の未成魚が群れを作っているが,雄がいなくなると優位の雌が性転換して雄になる。…

【ユムシ(螠)】より

…ふつうは体の前方腹面に1対の腹剛毛が,そして後端の肛門の周囲を1~2列に尾剛毛がとり巻いているが,これらの剛毛をまったくもたないものもある。吻の形や大きさにはいろいろあり,長いものではサナダユムシIkeda taenioidesのように1.5mになるものがあり,ボネリムシ科Bonelliidaeの種類では先端が二叉に分かれている。多毛類やホシムシ類のように体内に吻が陥入することはない。…

※「ボネリムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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