クチクラ(英語表記)cuticle

翻訳|cuticle

デジタル大辞泉 「クチクラ」の意味・読み・例文・類語

クチクラ(〈ラテン〉cuticula)

生物の体表にできる堅い膜。水分の放散を抑えたり、体を保護したりする。植物ではクチンろうなどからなり葉の表面に、動物では硬たんぱく質主成分昆虫甲殻類などの体表にみられる。角皮かくひキューティクル

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精選版 日本国語大辞典 「クチクラ」の意味・読み・例文・類語

クチクラ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] cuticula ) 表皮細胞の最外層の薄い膜。クチンからなり、抵抗力が強くて濃硫酸にもおかされない。体表を保護し、水分の発散をふせぐ。角皮(かくひ)

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改訂新版 世界大百科事典 「クチクラ」の意味・わかりやすい解説

クチクラ
cuticle

角皮,キューティクルともいう。生物体の体表(動物では上皮細胞維管束植物では表皮細胞からなる組織)の外表面に分泌される角質の層の総称。

 水中生活をしている植物にはクチクラは発達しないが,陸上の植物ではクチクラがよく発達することによって,植物体を機械的に保護すると同時に,水が過度に発散するのを防いでいる。クチクラは生長点付近をはじめ,花や果実を含めて植物体の全表面を覆っており,成熟した部分ほど厚くなっている。厚さは器官やさまざまの条件によって変化に富み,表面が滑らかな場合も,いろいろの模様を刻んでいる場合もある。蠟かそれに類似の物質でできていることが多いが,油性のものや樹脂性のもののこともあり,分泌される物質は植物によって異なっている。クチクラ層がつくられるのは,クチンの前駆体である油性のものが組織の表面に広がっていって,酸素に触れて多重化して固まるためであると説明されるが,これには異説もある。

 動物では節足動物がよく発達したクチクラをもち,外骨格をつくっている。昆虫類のクチクラ(表皮または表角皮)は外表皮と原表皮とからなる。外表皮はきわめて薄い蠟層やポリフェノール層・クチクリン層などからなり,耐水性や体表の光沢を保つ。その内部にある原表皮はクチクラの大部分を占め,内・外2層に分かれる。外表皮の内半部と原表皮では,キチンchitin分子のすき間をスクレロチンsclerotinという硬タンパク質が埋めているので,表皮が外骨格と呼ばれるほどの強靱性をもつことになる。これらの層には,内部の真皮細胞層から出た多数の孔管が貫通していて,もし表層磨滅すれば,その分泌物が孔管を通って表層に移動して修復される。エビやカニの原表皮にはさらにカルシウムが沈着しているのでいっそう硬い。体環節や脚などでは,クチクラは板状の硬皮板となっているが,硬皮板間は膜状であるために折り曲げることができる。クチクラは無制限に膨張できないので,成長に伴って一定時期ごとに旧皮を脱いで,新しいより表面積の大きいクチクラを形成する(脱皮)。なお,昆虫の気管や前・後腸は表皮の陥入によってできているので同じ構造をもつし,頭部では内骨格を形成している。

 そのほか条虫類の体表,真線虫類の腸壁一部軟体動物の体表および脊椎動物のうろこ,羽毛,毛の表面などにもクチクラがみられる。また原生動物の細胞表面もクチクラ様の皮膜で覆われているが,この場合にはとくにペリクラpellicleと呼んでいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クチクラ」の意味・わかりやすい解説

クチクラ
くちくら
cuticle 英語
Kutikula ドイツ語

生物体の最外層の細胞表面を覆う層状構造物をさす。角皮ともいう。植物ではクチンとよばれる脂肪酸の重合体が層状に分布してクチクラを形成し、水の蒸散を防ぐ。高等な植物ほど複雑な構造をもつ。一方、多くの無脊椎(むせきつい)動物の体表はガラス膜ともよばれるクチクラにより覆われる。とくに節足動物ではその発達は著しく、単に表層の細胞の機械的保護にとどまらず、動物の身体を支持する外骨格として働いている。昆虫のクチクラは、薄い外側の上クチクラと内側の細胞に接する厚い原クチクラの2層を基本構造としている。原クチクラは主として繊維状に配列するキチン(アセチルグルコサミンの重合体)と、この間を埋めるキノン硬化されたタンパク質(キノンの誘導体が、かすがいのようにタンパク質を結び付けている)からなり、強さと硬さをあわせもつ。上クチクラは、ろうのようなものなど水を通さない物質を多く含み、体内からの水の蒸散を妨げている。甲殻類では原クチクラにカルシウムが沈着していっそうの硬さを与えている。

[竹内重夫]


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百科事典マイペディア 「クチクラ」の意味・わかりやすい解説

クチクラ

キューティクル,角皮とも。動植物の体表をおおう細胞が外表面に分泌したかたい膜状構造。生物体を機械的に保護し,内部からの水の発散を防ぎ,外部からの物質の透入を調節する。動物のクチクラは硬タンパク質,キチンなどからなり,節足動物でよく発達。甲殻類ではさらにカルシウムが沈着してかたい甲皮となる。植物ではクチンと呼ばれる高級脂肪酸が主成分で,茎,葉,果実などの表面をおおう。厚さは植物により,また生育環境により差があるが,一般に乾地のものや樹上などに着生するものでは厚い。
→関連項目海岸植物外骨格キチン表皮

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クチクラ」の意味・わかりやすい解説

クチクラ
cuticle

生物体の表面を保護する堅い非細胞性の構造で,表層細胞(動物では上皮細胞,植物では表皮細胞)から分泌される。角皮ともいう。生物体を保護するのに役立つが,そのほか,水の発散を防いだり,逆に外囲からの水や物質の透過を調節するなど,生理的に重要な役割をしている。主成分物質としては植物のクチン cutin,昆虫のキチン chitinなどがある。髪の毛の表面を覆っている薄い細胞の層をさすキューティクルもクチクラと同意である。毛髪には角質化した蛋白質が鱗のように重なっており,健康な状態ではそれがきちんと並んでいるが,パーマやヘアダイ,紫外線などが原因ではがれ落ちてしまうことがある。

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栄養・生化学辞典 「クチクラ」の解説

クチクラ

 (1) 卵殻の最も外側にある薄い膜.(2) 植物の角皮.(3) 皮膚の表皮の外側の膜.

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世界大百科事典(旧版)内のクチクラの言及

【髪】より

…髪を顕微鏡で観察すると,その表面が屋根瓦状(毛尖のほうから毛根に向かって順に1枚ずつの瓦が積み重なるような)構造をなすのが認められる。このような屋根瓦状の髪表面部位をキューティクルcuticle(毛小皮)と称する。髪の基部,すなわち毛根には皮脂腺がつねに開口しており,髪の表面は脂性分泌物により潤されている。…

【脱皮】より

…節足動物など硬いクチクラで体表をおおわれた動物は,成長の過程で何回か古いクチクラを脱ぎ捨てなければならない。この過程を脱皮という。…

【葉】より

…シダ植物の葉も表皮の構造はよく似ているが,すべての細胞に葉緑体がある点で異なっている。表皮にはクチクラ層が発達しており,水分が過度に蒸散しないようになっている。表皮組織の下には長方形の細胞が密に整列した柵状組織があり,その内側には細胞間隙(かんげき)の発達した海綿状組織があって,それらの組織で光合成が行われる。…

【皮膚】より

…ウズムシ類,センチュウ類,ワムシ類など水生の小動物では,上皮細胞の表面に繊毛があり,水中での運動や食物粒子の摂取に役だっている。節足動物など陸上生活も行う動物では,上皮細胞の表面が細胞の分泌したクチクラでおおわれている。クチクラは,多糖類キチン質と硬タンパク質からなり,昆虫類などでは堅い外骨格を形成している。…

※「クチクラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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