改訂新版 世界大百科事典 の解説
ポインティング=ロバートソン効果 (ポインティングロバートソンこうか)
Poynting-Robertson effect
太陽の引力で公転している惑星間物質が,太陽の光圧の影響で,渦巻状の軌道を描いて,しだいに太陽に近づいていく現象をいう。イギリスのポインティングJ.H.PoyntingとロバートソンH.P.Robertsonによって指摘されたもの。惑星のように質量の大きいものは,光圧の影響が無視できるが,惑星間物質のような微小な粒子では,質量に比例する引力に対して,断面積に比例する光圧の強さが無視できない。公転している惑星間物質に太陽光があたる場合,公転速度と光速度との比によって,ちょうど進行中の列車の窓に雨が斜めにあたるように,惑星間物質にも,わずかながら斜め前方から光があたることになる。その光圧で,公転運動にブレーキがかかり,軌道半径がしだいに小さくなっていく。太陽に到達するまでの時間は,惑星間物質の大きさ,質量,光学的性質によって異なるが,地球軌道付近を公転している半径1μm,密度3g/cm3の黒体の塵粒子は,約2000年で太陽に落ちこんでしまう。
執筆者:田鍋 浩義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報