翻訳|port
ポルトガル北部のドーロ川流域でつくられる甘味の強いワイン(甘味果実酒)。ポートの名称は、ポルトporto港で貯蔵、船積みされることからきている。なおポートの製法は、17世紀の後半、イギリスに向けて輸出されたワインが、航海中に酒質を損なわないためにワインに少量のブランデーを加えていたことがヒントで、発酵中にブランデーを加える独自な方法が生み出されたと伝えられる。
ポート製造に使われるブドウは、赤のティンタ・フランシスカ、白のマルバジアなどで、強烈な太陽と乾燥した気候の下で育ったブドウを完熟するまで木において、糖分を30%ぐらいにする。これをつぶして果皮とともに発酵させ、糖分が半分ぐらいに減ったところでブランデーを添加して発酵を止め、絞って上澄み液を集める。この液は発酵中果皮から色素が溶出して色はルビー色、アルコール分は19~20%、糖分は10~15%である。
ポートの種類には、美しいルビー色で、4~5年熟成させた普及品のルビーポート、ルビーポートをさらに黄茶色まで熟成させたタウニーポート、同じ年に収穫したものだけを貯蔵熟成させたなかで、品質のよいものを選んだビンテージポート、わりあいよくできた年のものを早く瓶詰めして熟成させたオールド・クラステッド・ポート、ビンテージポートをさらに10~15年間熟成させた高級もののレイト・ボトルド・ビンテージポートがある。いずれも甘口で、デザートワインとして飲まれる。
[原 昌道]
ポルトガル産の強化ブドウ酒。たんにポートとも呼ぶが,この名はポルトガルの港市ポルト(英語でポート)から主としてイギリスに積み出されてきたことによる。現在では原産地呼称法により,ドーロ川上流のアウト・ドーロ地域で,同法の定める規格と制限に基づいてつくられたものに限り,ポートを呼称することが認められている。原料ブドウにはいくつもの品種を用いて混醸し,発酵中のもろみにブランデーを添加して発酵を停止させ,糖分を残したまま熟成させる。タイプにはビンテージ,クラストcrusted,トーニーtawny,ルビー,ホワイトなどがある。ホワイトを除いては赤ブドウ酒で,熟成の度合によって,紅色,淡紅色,茶褐色となり,ホワイトは黄色ないし淡褐色になる。ビンテージは作柄のよい単一収穫年のものだけでつくる高級品であり,年度のちがうものをブレンドして熟成させるクラストや,樽でじっくり茶褐色になるまで熟成させるトーニーもビンテージに次ぐ品質をもつ。ブドウ酒の中でも長もちのするものの一つで,100年くらいのものもある。いずれもアルコール分は20%内外,おもにデザートワインとして用いられる。なお日本では明治以降,ブドウ酒にアルコール,酸,砂糖,色素などを加えた独特の甘味ブドウ酒がつくられ,これをポートワインと呼んでいた。
執筆者:大塚 謙一
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…一方,ドウロ川以北,リマ川以南の地域全体の呼称となったポルトゥス・カレからのちの王国名ポルトガルが生まれた。商業都市ポルトの繁栄は,ドウロ川流域で産するブドウを原料とする独特の甘味酒(ポートワイン)の生産,輸出と密接な関係をもつ。ポルトのブドウ酒,すなわちポートワインのイギリスへの輸出は17世紀末より盛んになるが,1703年のメシュエン条約によりイギリスがポルトガル産ブドウ酒の輸入に関して特恵待遇を約して以来,飛躍的に増加した。…
※「ポートワイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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