甘口(読み)あまくち

精選版 日本国語大辞典 「甘口」の意味・読み・例文・類語

あま‐くち【甘口】

〘名〙 (「あまぐち」とも)
① 酒、みそ、しょうゆなどの食品の口あたりが甘いこと。また、そのもの。⇔辛口
俳諧・見花数寄(1679)「霧はにこせと又京の水 菊の露甘口から口とりどりに〈元順〉」
② 甘い味のものを好むこと。また、その人。下戸(げこ)甘党
※人情本・英対暖語(1838)二「下戸の作者が甘口に、仮用(かり)て題号(なづけ)し英対暖語は、美言(せじ)で丸て艷画(うはき)製本(こねて)、上餡(こしあん)の細かき真情
③ (形動) 人の気をひくような言い方、言葉口先だけのうまい言葉。また、そのような言い方をするさま。
※談義本・当風辻談義(1753)五「教も段々、甘口(アマクチ)を好(このむ)があれば、ぴんとしたを望もあり」
※歌舞伎・戻橋脊御摂(1813)三立「へへ、甘口(アマグチ)にも並べたな」
④ (形動) 優しい言葉。穏やかな口ぶり。
※歌舞伎・助六廓夜桜(1779)「おきゃあがれ、おれがさっきから甘口に言やあ付き上がりがして」
⑤ (形動) 状態がごくありふれていること。態度などが手ぬるいこと。また、そのさま。
※談義本・当世下手談義(1752)二「七生迄の勘当とはあまくち」
団団珍聞‐二五号(1877)「甘口な母が内証で借(かす)ステーラ 木一庵」
⑥ (形動) 間が抜けていること。思慮の浅はかなこと。また、そのさま。お人よし。愚鈍。
浮世草子・諸道聴耳世間猿(1766)五「越中屋善次郎とて、ちとあま口な男なれば」
[語誌]多く用例が見られるのは江戸中期以降で、当時から⑤のような比喩的な用法で用いられている。しかし、既に平安時代中期に「甘口」を語構成上の成分とする「あまくちねずみ(甘口鼠)」(「新撰字鏡」「和名抄」など)という語も見えることから考えると、「あまし」からこの語が派生したのはさらに早い時期であろう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「甘口」の意味・読み・例文・類語

あま‐くち【甘口】

[名・形動]
比較的甘み強い、または塩分辛みをおさえた味加減。また、そのもの。「甘口の酒」⇔辛口
甘いものを好むこと。また、その人。甘党。⇔辛口
人の気にいるような口ぶり。口先だけのうまい言葉。甘言かんげん。「甘口に乗せられる」
穏やかに言うこと。なまぬるい言い方。また、そのさま。「甘口批評
思慮が浅く、間が抜けていること。また、そのさま。
「つりこまれるといふやうな―な事があるものか」〈滑・八笑人・四〉
[類語](1甘み甘味甘い甘ったるい甘美かんび甘露甘辛甘辛い甘酸っぱいスイート/(2甘党右党両刀遣い盗人上戸雨風

うま‐くち【甘口】

酒・味噌・醤油などで、甘みが勝っていること。また、そのもの。あまくち。
人の心をとらえる巧みな言葉。巧言こうげん。「勧誘員の甘口に乗せられる」
見かけの有利な仕事

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