改訂新版 世界大百科事典 「マエガミジカ」の意味・わかりやすい解説
マエガミジカ (前髪鹿)
tufted deer
Elaphodus cephalophus
長さ1~3cmのごく短い角をもつ小型の偶蹄目シカ科の哺乳類。キョンに似るが角に枝がなく,名のように雄の前頭部の毛が17cmほどに長くのびて,馬蹄形の黒色の毛冠をつくるのが特徴。毛冠は角をおおいかくす。雄の上あごには長いきば(犬歯)がある。毛は硬く,粗く,ほとんどとげに近い。体色は暗褐色ないし暗い灰色。個体によって前半身に霜降り状の白斑のあるものがある。体長110~160cm,肩高52~72cm,尾長7~15cm,体重40~50kg,中国南部,チベット,ミャンマーに分布。海抜900~2600mの深い茂みにふつう単独ですみ,おもに草を食べる。繁殖期は4~5月で,雌雄とも鳴声をあげ,呼びかわす。妊娠期間6ヵ月で,1産1~2子を産む。子には背中の正中線に沿って白斑の列がある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報