改訂新版 世界大百科事典 「センノウ」の意味・わかりやすい解説
センノウ (仙翁)
Lychnis senno Sieb.et Zucc.
中国原産で,日本でも古くから観賞用に栽培されるナデシコ科の多年草。和名は昔,京都の仙翁寺で栽培されていたことによるという。茎は直立し,高さ約50cm。葉は長さ7cmほどで,卵形から長楕円形,両端はとがり,両面とふちには毛がある。7~9月,茎の先に集散花序をつける。萼片は合着して萼筒となり,棍棒状で長さ約3cm,10脈がある。花は直径4cmほどで濃紅色,先は4から6に不規則に裂ける。シロバナセンノウと呼ばれる白花品もある。おしべは10本,花柱は4本。果実は萼筒から突き出て,先は4裂する。おもに庭園に植えて楽しまれるが,ときに鉢作りにすることもある。耐寒性のあるじょうぶな宿根草で,半陰地でよく生育開花する。3~4月ごろ株分けをした苗を植えるが,植え場所には堆肥,腐葉土類を多く施しておくとよい。繁殖は株分けのほか,種子を春まきしてもよい。
センノウの仲間は花の美しいものが多く,いくつかが観賞用に栽植されている。ガンピL.coronata Thunb.はセンノウに比べ,葉の幅がより広く,花弁の先は浅い数多くの裂片に切れ込む。ムギセンノウAgrostemma githago L.(英名corn cockle,corn campion,crown-of-the-field,corn rose,rose campion)はヨーロッパ原産の一年草で,ときにセンノウ属に入れられることもある。茎は高さ約50cm,よく分枝し,枝の先に1花をつける。萼裂片は萼筒と同長か,より長く約2.5cm。花は直径3cmほどで紅紫色。そのほかにも,スイセンノウL.coronaria Desu.(ヨーロッパ原産),アメリカセンノウL.chalcedonica L.(英名Maltese cross,scarlet lychnis,Jerusalem cross,scarlet lightning,シベリア原産),サクラマンテマL.pendula L.,コムギセンノウL.coeli-rosa Desr.(英名rose-of-Heaven),リクニス・ハーゲアナL.haegeana Lem.(エゾセンノウとマツモトセンノウの雑種)など数種が栽植される。
また日本には数種のセンノウ属Lychnis(英名campion)植物が野生しており,その代表であるフシグロセンノウL.miqueliana Rohrb.は落葉樹林の林縁によく見られる大型の多年草で,茎は高さ50cmから1mに達し,直立,節はふくらみ暗紫色を帯びる。葉は長さ約10cm,卵形から楕円形で,先はとがる。7~9月,茎や枝の先にそれぞれ2個から5個の花を集散花序につける。萼筒は長さ約3cm,花は径5cmほどで,朱色で鮮やかである。本州から九州にかけて分布する日本特産種で,栽培されることもある。センジュガンピL.gracillima Makinoは本州の中部以北に生育し,葉はふちが波打ち,花は白色で径2cmほどである。エンビセンノウL.wilfordii Maxim.は本州中部以北と北海道に分布する。先が4深裂した赤い花弁が特徴的であり,これをツバメの尾に見たてて名がついた。マツモトL.sieboldii Van Houff.(別名マツモトセンノウ)は九州や本州中部の草原などに生育し,また観賞用に栽培もされる。花は径約5cm,花弁は浅く2裂し,先は多数の小さな切れ込みがある。和名は花の形が松本幸四郎の紋所(四つ花菱)に似ているためついたという。
執筆者:三木 栄二+柳 宗民
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報