日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミニナ」の意味・わかりやすい解説
ウミニナ
うみにな / 海蜷
mud creeper
[学] Batillaria multiformis
軟体動物門腹足綱ウミニナ科の巻き貝。本州、四国、九州から台湾および朝鮮半島、中国沿岸に分布し、内湾の潮間帯の小石のある砂泥底に普通にみられる。殻高30ミリメートル、殻径13ミリメートルぐらいの高い円錐(えんすい)形をしている。螺層(らそう)は8階ほどあり、殻質は厚く堅固であるが、殻頂部は侵食されて欠けている個体が多い。殻表は小さな黒点の並んだ帯があり石畳状になっているが、縫合下に白色帯がある個体や、縦肋(じゅうろく)が明らかな個体など、形態差異はきわめて大きい。殻口は半円形で黒く、内唇には白色の滑層がこぶ状に発達している。蓋(ふた)は円形で薄く褐色を帯び多旋形である。雑食性で海藻にも群がって食べる。満潮時は砂の中に潜ってじっとしているが、干潮になると砂からはい出し、20~30分間摂餌(せつじ)行動を続け、終わると蓋を利用して砂を掘って潜る。卵は寒天質で紐(ひも)状の塊にして泥の中に産む。近縁種のホソウミニナB. cumingiiはいくぶん外海的環境の砂礫(されき)底を好む。
[奥谷喬司]