日本大百科全書(ニッポニカ) 「キョン」の意味・わかりやすい解説
キョン
きょん / 羗
muntjac
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科キョン属に含まれる動物の総称。この属Muntiacusの仲間は原始的なシカ類で、東南アジアに分布し6種がある。いずれも体は小さく、雄には基部で枝分れした短い角(つの)がある。角の基部の毛で覆われた部分、すなわち角座が非常に長く、雄の上あごの犬歯は長大で牙(きば)状である。目の下方に大きな腺(せん)の開口部が1対あり、一見目のようなのでヨツメジカ(四目鹿)ともいわれる。単独またはつがいで森林や低木林にすみ、ヒマラヤ地方や四川(しせん)省などでは標高2500メートルにもすむ。早朝または夕刻に採食する。食物は樹葉、木の芽など。台湾では農作物を害することもある。11月に交尾し、春ごろ1子を産む。中国南部、東は福建省から西は四川省および台湾に分布するシナキョンM. reevesiは、頭胴長80~87センチメートル、肩高30~45センチメートルほどで角は20センチメートル以下、被毛は短く、くすんだ赤褐色、背には黄灰色の不明瞭(ふめいりょう)な斑点(はんてん)がわずかにみられる。近縁種にインドからボルネオ島まで分布する大形のホエジカ(インドキョン)M. muntjakがある。
[北原正宣]