キョン(その他表記)lesser muntjac
Chinese muntjac
Muntiacus reevesi

改訂新版 世界大百科事典 「キョン」の意味・わかりやすい解説

キョン (羗)
lesser muntjac
Chinese muntjac
Muntiacus reevesi

雄が角のほかきば状の犬歯をもつ小型の偶蹄目シカ科の哺乳類。タイワンキョンともいう。中国南部と台湾分布する。肩高30~40cm,体長48~70cm,体重7.5kg前後。四肢が短く,背が丸く,体の毛は短く滑らかで黄色~赤褐色,雄は長さ9cm前後の二叉の角を生ずるほか,上あごの犬歯が長くきば状で口外に突き出る。角座の基部から出る隆起は目の上を通って目の前に達し,その内側に黒毛で縁取られた細長い前頭腺の開口があり,目のように見えるためヨツメジカとも呼ばれる。前頭部の毛は長く角座の基部を隠す。森林に1匹,または1対ですみ,おもに朝と夕方出歩き,草,葉,落ちた果実などを食べる。危険を感ずるとイヌのような声で盛んに鳴く。繁殖期は不定,妊娠期間は210日前後,1腹1子,子は深い茂みで生み落とされ数日そこに隠れている。寿命は飼育下で約17年。肉と皮を目的に狩られる。イギリスとフランスでは移入されたものが野生化している。東南アジアにはボルネオキョン,マエガミキョンなど近似の数種がある。その一つのホエジカインドキョンMuntiacus muntjak(英名Indian muntjac)は大型で四肢が長く,肩高50~58cm,角は15cmに達し,前頭部の毛が短い。別名ムンチャク。スリランカインドマレー半島からスマトラジャワ,ボルネオ,バリ,ロンボクなどの島々にかけて分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キョン」の意味・わかりやすい解説

キョン
きょん / 羗
muntjac

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科キョン属に含まれる動物の総称。この属Muntiacusの仲間は原始的なシカ類で、東南アジアに分布し6種がある。いずれも体は小さく、雄には基部で枝分れした短い角(つの)がある。角の基部の毛で覆われた部分、すなわち角座が非常に長く、雄の上あごの犬歯は長大で牙(きば)状である。目の下方に大きな腺(せん)の開口部が1対あり、一見目のようなのでヨツメジカ(四目鹿)ともいわれる。単独またはつがいで森林や低木林にすみ、ヒマラヤ地方や四川(しせん)省などでは標高2500メートルにもすむ。早朝または夕刻に採食する。食物は樹葉、木の芽など。台湾では農作物を害することもある。11月に交尾し、春ごろ1子を産む。中国南部、東は福建省から西は四川省および台湾に分布するシナキョンM. reevesiは、頭胴長80~87センチメートル、肩高30~45センチメートルほどで角は20センチメートル以下、被毛は短く、くすんだ赤褐色、背には黄灰色の不明瞭(ふめいりょう)な斑点(はんてん)がわずかにみられる。近縁種にインドからボルネオ島まで分布する大形のホエジカ(インドキョン)M. muntjakがある。

[北原正宣]


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百科事典マイペディア 「キョン」の意味・わかりやすい解説

キョン

ヨツメジカ,タイワンキョンとも。偶蹄(ぐうてい)目シカ科。体長65cm,肩高41cmほど。体毛は茶色,四肢は黒ずむ。中国東部,台湾に分布。英国に移入。小型のシカで,密林中に1〜3頭ですみ,草,木の葉などを食べる。おくびょうだが,イヌなどに追われると,雄は牙(きば)状の犬歯で戦う。1腹1〜2子。インド〜マレー地方に近縁種のホエジカ(インドキョン)がいる。日本では外来生物法により特定外来生物に指定されている。
→関連項目シカ(鹿)

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「キョン」の解説

キョン
学名:Muntiacus reevesi

種名 / キョン
科名 / シカ科
外来種 / ◎
解説 / シカの中では原始的な種で、しげった森に単独で生活します。オスはきばも発達しています。
体長 / 70~96cm/肩高40~52cm
体重 / 10~16kg
食物 / 木の葉、芽、草
分布 / 中国南部と台湾の森林。千葉県南部と伊豆大島で野生化

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キョン」の意味・わかりやすい解説

キョン
Muntiacus reevesi; Reeves' muntjac

偶蹄目シカ科。体長 0.9~1.4m,体高約 40cm。ジャコウジカに似るが,雄は2尖の小角をもつ。単独または1対で生活し,早朝と夕方に草,木の葉,芽などを食べる。警戒するときしわがれたイヌに似た大声を出す。中国南部,台湾の森林地帯に分布する。イギリスには移入個体が分布する。

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