改訂新版 世界大百科事典 「マユハキタケ」の意味・わかりやすい解説
マユハキタケ
Trichocoma paradoxa Jungh.
子囊菌類の不整囊菌類のコウジカビ科のキノコ。暖地性の菌で,タブノキの腐朽しかけた樹幹,切口などに発生し,子実体は黄~黄褐色の円筒形で,高さ1~2cmになる。全体の形が化粧用の眉はけに似ているので,この名がある。子実体の胴の部分は菌糸の密な集合体で,先に胞子(子囊胞子)が粉状に固まっている。ジャワ,ボルネオなど熱帯地方に分布しており,日本では関東南部および以南のタブノキを調べるとよくみられる。海岸に近いところに多いようである。子実体先端の胞子を顕微鏡で調べると,卵形で黄色,表面に特徴のある鉢巻状の突起模様をもっている。この胞子を人工的に寒天の上で発芽させると,菌糸で広がり,ところどころからアオカビ状の子実体が生じ,無性の胞子(分生子)をつくるところから,菌類系統を調べる上で重要視されている。
執筆者:椿 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報