日本大百科全書(ニッポニカ) 「マラボリア家の人びと」の意味・わかりやすい解説
マラボリア家の人びと
まらぼりあけのひとびと
I Malavoglia
イタリアの作家ベルガの長編小説。1881年刊。いわゆる真実主義(ベリズモ)の代表作。シチリア島東海岸の漁村アーチトレッツァを舞台に、貧しい漁民一家の離散する過程が悲劇的な叙情性のうちに描き出されている。ベルガは、ふとした偶然から手に入れたある船長の航海日誌にヒントを得て、粗削りで非装飾的な文体を駆使し、運命に翻弄(ほんろう)される下層社会の描出に努めている。ベルガによれば、人はみな悠久の時を前にした敗者にすぎない。そこで総合タイトル「敗者」という長編五部作を構想、『マラボリア家の人びと』はその第一巻として刊行されたが、第二巻『マストロ・ドン・ジェズアルド』(1889)までしか発表されず、一部を除き他は未完に終わった。
[河島英昭]