改訂新版 世界大百科事典 「マリタ」の意味・わかりやすい解説
マリタ
Mal'ta
ロシア,イルクーツク市西方85km,マリタ村のベラヤ川支流にある東シベリア後期旧石器遺跡の一つ。1928年,M.M.ゲラシモフによって発見され,57年まで調査された。文化層は砂質粘土層中,表土から1.3~1.75mの深さにある。炉址をもつ14m×5m,9m×3.5mの長方形や径5~6mの円形の竪穴住居址,そして浅いくぼみだけの季節的仮小屋風のものなどの同一時期の多数の住居址が発見されている。これらの住居址は,トナカイの角や板石で構築されていた。また,住居址内から多数の副葬品をもった幼児埋葬遺体も発見されている。出土遺物は,石器,骨角器などきわめて多数で,とくに骨角製品中に,ビーナス像,水鳥類の像,毛犀の像などの彫刻品,蛇を刻んだ板状装身具などのすばらしい芸術品を含んでいる。この遺跡から7~8km離れたブレチBuret'にも,後期旧石器住居址群があり,ここから出土した遺物群はマリタ遺跡のものにきわめて類似し,同様にビーナス像も出土している。これらの遺跡の年代は,約2万年前と推定されている。
執筆者:加藤 晋平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報