骨角器
こっかくき
脊椎(せきつい)動物(ヒトも含めて)の骨角歯牙(しが)を材料としてつくられた製品。石製、土製のものに比べて、大きさ、形の加工が自由であり、したがって多くの種類のものがつくられている。刺突(しとつ)や掘り起こすための道具、彫刻を施して像や装飾をつけたもの、卜占(ぼくせん)の材料などがあり、食肉獣の歯牙は穿孔(せんこう)しただけで垂飾(すいしょく)の効果があった。
考古学の資料からみて、形の整った製品のみられるのは、ヨーロッパの旧石器時代後期になってからで、オーリニャック文化に単純な尖頭器(せんとうき)があり、それに続くソリュートレ文化、マドレーヌ文化になると、鋭い逆刺をつけたり着柄(ちゃくへい)法をくふうした製品ができる。トナカイの角(つの)でつくられることが多く、使用法は木製の柄(え)の先端に固定して槍(やり)としたり、柄の先にソケットをつくり、そこに差し込んで、離脱が自由にできる銛(もり)の機能をもつものもつくられている。中石器時代から新石器時代にかけて骨角器は各地でつくられる。シカの中手(ちゅうしゅ)・中足骨(ちゅうそっこつ)を材料とした単純な刺突具、銛頭(もりがしら)にも種々の形のものがつくられ、閉窩(へいか)式、開窩式の区別もみられるようになる。銛頭の先にさらに石製、イノシシの牙(きば)製の鏃(やじり)をはめ込むものもある。こうした銛頭は、世界の各地で、地域ごとに特徴ある形をつくっていた。釣り針も骨角でつくられている例が多いが、貝、歯牙製のものもある。骨角は水中で魚を寄せ付ける効果があったろう。中石器時代以降に盛んにつくられる。鉤(かぎ)形でなく、両端をとがらす針状のものもある。鉤形のものは、軸と鉤の部分を別々につくる例も多い。しかし、一つの材料からつくる鉤形が基本形であったろう。形態、大きさは実に多様で、釣りの効果をあげるためにさまざまなくふうを凝らしている。なお、骨角器の材料として鯨骨(げいこつ)が使える場合は、その材料が大きく豊富なところから、独特の骨角器文化をつくりだした。北太平洋沿岸地域にそうした例をみる。
[金子浩昌]
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骨角器
こっかくき
骨または角でつくられた道具。旧石器時代から世界に広く出現している。銛,釣針,やす,鏃,装身具などがある。なかでも海獣骨を用いたものには大型のものが多く,骨鍬,骨斧のようなものがある。角製品ではしかの角を用い,その枝分れの部分を利用して釣針などをつくる例もある。多くは貝塚から出土する。
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こっかく‐き【骨角器】
〘名〙 鳥、獣、魚などの骨、牙
(きば)、角で作った器具。ヨーロッパでは旧石器時代後期、日本では
縄文時代から盛んにつくられ、特にシカの骨や角を利用したものが多い。針、
錐、櫛、鏃
(やじり)、銛
(もり)、釣り針などがある。
骨器。
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骨角器
こっかくき
原始時代,獣・鳥・魚の骨や角などでつくられた道具
縄文時代には銛 (もり) ・釣針などの魚撈用具や鏃 (やじり) として利用されたが,弥生時代に入ると装身具などに用いられるようになった。
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骨角器
こっかくき
動物の骨・角・歯・牙で作った道具・装身具の総称
旧石器時代後期から中石器〜新石器時代にかけて盛んに使用された。のち金属器の出現によって用いられなくなった。
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こっかく‐き【骨角器】
獣類の骨・角・歯牙や魚骨・鳥骨などで作った道具。石器時代に多く用いられた。銛・簎・鏃・針など。
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こっかくき【骨角器】
骨や角を加工して道具としたもので,牙製品を含めることもある(図)。原人段階の原始的なものから,精巧で多様なものへと現代に至るまで加工されてきている。数十万年前の北京原人は,すでにシカの頭骨を多少加工して,容器様のものとしたことが知られ,旧人段階になると骨や角を加工して先をとがらせ,尖頭器としたものが世界各地から報告されている。とくに骨角器の生産の高まったのは,後期旧石器時代になってからである。各種の骨や角から,槍先や銛(もり)頭のような狩猟具,針や錐(きり)といった工具,鹿角製の投槍器や指揮棒,そしてマンモス牙製の女性像や装身具が作りだされている。
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