化学辞典 第2版 「マンガン化合物」の解説
マンガン化合物
マンガンカゴウブツ
manganese compound
マンガンは酸化状態がきわめて多く,酸化数-3~7までの化合物が知られている.
(1)Mn-Ⅲ:[Mn-Ⅲ(CO)4]3-,Mn(NO)3CO[CAS 14951-98-5]は四面体型構造.緑色の揮発性結晶.融点27 ℃.
(2)Mn-Ⅱ:MⅠ2[Mn-Ⅱ(pc)](pc:フタロシアニン).
(3)Mn-Ⅰ:HMn-Ⅰ (CO)5,[Mn(CO)5]- は三角両すい型構造.
(4)Mn0:Mn2(CO)10[CAS 101070-69-1].Mn原子を中心にした正八面体型がMn-Mnで結合.黄色の結晶.融点154~155 ℃.
(5)MnⅠ:電子配置3d6,Na5[MnⅠ (CN)6][CAS 75535-10-3].無色の固体.強い還元剤.MnⅠ (CO)5Cl,MnⅠ(C5H5)(CO)3(C5H5:シクロペンタジエニル基).
(6)MnⅡ:3d5,もっとも普通のマンガン化合物.MnO[CAS 1344-43-0](緑色)のほかMnX2型二元化合物.水和物および水溶液は Mn2+ のアクアイオン [MnⅡ(H2O)6]2+ のため薄桃色である.高スピン型で磁化率が大きい.磁気モーメント5.8~5.9 μB(ボーア磁子).八面体型 [MnⅡ(H2O)6]2+,四面体型MnCl42-,正方平面型[Mn(H2O)4]SO4・H2O.
(7)MnⅢ:3d4,Mn2O3[CAS 1317-34-6](黒色),MnO(OH)[CAS 1332-64-3](黒色),MnPO4・H2O[CAS 14986-93-7](暗緑色),K3[Mn(C2O4)3]・3H2O(ピンク色),Mn(CH3CO2)3・2H2O(暗褐色)など.不安定で熱および光によって MnⅡに還元されやすい.磁気モーメント4.8~4.9 μB.
(8)MnⅣ:3d3,MnO2[CAS 14854-26-3]がよく知られている.両性化合物.錯体以外の単塩の例は少ない.
(9)MnⅤ:3d2,MⅠ3MnO4(青色).濃アルカリ溶液中に存在する.
(10)MnⅥ:3d1,マンガン酸塩MⅠ2MnO4(緑色).アルカリ溶液中で比較的安定である.酸化力が強い.
(11)MnⅦ:3d0,過マンガン酸塩MnⅠMnO4が代表的化合物で紫赤色.強酸化剤.
用途は,二酸化マンガンMnO2はマンガン電池の陽極材,マッチの製造,ガラスの着色・脱色剤,花火に使用される.マンガン化合物は「マンガン及びその化合物」として化学物質排出把握管理促進法・第一種指定,労働安全衛生法の名称等を通知すべき危険物及び有害物指定,大気汚染防止法・有害大気汚染物質/優先取組22物質の一つに指定されている.水道法水質基準は「マンガンの量に関して0.05 mg/L 以下であること」となっている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報