大気汚染防止法(読み)たいきおせんぼうしほう

精選版 日本国語大辞典 「大気汚染防止法」の意味・読み・例文・類語

たいきおせん‐ぼうしほう タイキヲセンバウシハフ【大気汚染防止法】

〘名〙 工場煤煙粉じん排出規制自動車排出ガス許容限度を定めるなど、国民の健康の保護生活環境保全とを図ることなどを目的とする法律。昭和四三年(一九六八)一二月施行

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デジタル大辞泉 「大気汚染防止法」の意味・読み・例文・類語

たいきおせん‐ぼうしほう〔タイキヲセンバウシハフ〕【大気汚染防止法】

工場などから生じる煤煙ばいえん自動車排気ガスなどを規制し、大気汚染を防止するとともに、被害が発生した場合の事業者損害賠償責任について定めている法律。昭和43年(1968)施行。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大気汚染防止法」の意味・わかりやすい解説

大気汚染防止法
たいきおせんぼうしほう

工場、事業場から生じるばい煙や粉じんなどの排出を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、ならびに自動車から排出される排気ガスに係る許容限度を定めること等により、大気汚染を防止するとともに、大気汚染被害者に無過失で損害賠償を支払うことを定めた法律。昭和43年法律第97号。この法律の前身は、ばい煙の排出の規制等に関する法律(昭和37年法律146号)であったが、大気汚染の深刻化に伴い改正され、現行法となった(なお、無過失責任規定は昭和47年)。その後も、大気汚染防止法は、硫黄(いおう)酸化物の総量規制、建築物解体に伴う石綿アスベスト)の飛散防止、揮発性有機化合物VOC)の排出規制などを目的とした改正が行われている。

 大気汚染防止法には、ばい煙等の排出基準による排出規制(3条以下)、一定地域の大気汚染をばい煙等の総量を削減することにより減少させようとする総量規制(5条の2以下)、粉じんに関する規制(18条以下)、有害大気汚染物質対策の推進(18条の20以下)、自動車排出ガスの許容限度とそれを超える場合の都道府県知事による要請(19条以下)、無過失損害賠償責任(25条以下)などが定められている。

 なお、大気汚染防止に関連した法律では、排ガス規制として自動車排出窒素酸化物総量削減法が、1992年(平成4)に成立した。この法律は、2001年に改正され、窒素酸化物の規制が強化されるとともに、新たに浮遊粒子状物質(SPM、直径12マイクロメートル以下の空気中に浮かぶ大気汚染物質)の排出規制が加えられた。さらに2007年には、排出規制の重点対策地区を指定するための改正が行われた。また、ダイオキシンについては廃棄物処理施設からの排出を極力抑えることがもっとも重要な対策の一つであるとされ、1999年(平成11)ダイオキシン類対策特別措置法が成立した。

[淡路剛久]

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百科事典マイペディア 「大気汚染防止法」の意味・わかりやすい解説

大気汚染防止法【たいきおせんぼうしほう】

工場・事業場からの煤煙と自動車排出ガスを規制して国民の健康を保護し,健康被害が生じた場合にはその責任を明らかにして被害者の保護に当たることを目的とした法律。煤煙排出規制法(1962年)を全面改正して1968年制定されたもの。工場・事業場の事業活動に伴って発生する煤煙排出の規制,自動車排出ガスに係る許容限度等を定める。1970年の改正により〈産業発展との調和〉の条項を削り,規制対象地域を全国に広げ,煤煙,自動車排出ガスの定義をより精密化し,都道府県に国を上回るきびしい規準の設定を許した。近年,さらに規制を強化するための改正が積み重ねられている。憂慮されている中国の大気汚染については,法的規制の不備,不徹底はもちろん環境技術の積極的導入や環境意識の向上といった先進国に共通する課題認識の欠如が国際的にも批判されている。→大気汚染自動車排出ガス規制
→関連項目公害罪水質汚濁防止法大気浄化法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大気汚染防止法」の意味・わかりやすい解説

大気汚染防止法
たいきおせんぼうしほう

昭和 43年法律 97号。工場および事業場における事業活動に伴って発生するばい煙の排出などの規制や自動車排出ガスの許容限度設定などにより,大気汚染に関し国民の健康保護と生活環境保全とを目的とする法律。公害対策基本法の制定に伴い,公害防止関係法整備の一環として「ばい煙の排出の規制等に関する法律」に代って制定されたが,同法の欠陥是正のため 1970,71,72,74年に次の諸点などの改正をみた。 (1) 「経済の健全な発達との調和」条項の削除,(2) ばい煙として新たにカドミウム,塩素などを加えるなど規制物質の拡大,(3) 工場などの集合している地域における総量規制基準,(4) 指定地域制廃止による全国的規制,(5) 都道府県または知事の権限強化。

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世界大百科事典 第2版 「大気汚染防止法」の意味・わかりやすい解説

たいきおせんぼうしほう【大気汚染防止法】

大気汚染を防止するために必要な規制を行うための枠組みを定める法律である。より具体的な規制対象や規制手法は,同法をうけた命令,行政規則(〈大気汚染防止法施行令〉〈大気汚染防止法施行規則〉,および関連の告示等)に規定されている。大気汚染防止法としては1968年に公布。1962年制定の〈ばい煙の排出の規制等に関する法律〉は同法の前身にあたる。この1962年法は,1960年代以降,四日市喘息など大気汚染問題が各地で深刻化したことに対処すべく制定されたものであったが,固定発生源への規制のみが念頭におかれていたために,自動車の排出ガスを規制対象に含まず,規制が指定地域に限られるなど不備な点が多かった。

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