改訂新版 世界大百科事典 「ミズカマキリ」の意味・わかりやすい解説
ミズカマキリ (水蟷螂)
water scorpion
Ranatra chinensis
半翅目タイコウチ科の昆虫。カマキリに似た水中の虫という意味で,長大な前腿節(ぜんたいせつ)の途中に歯状突起があり,脛節(けいせつ)を折り畳むとその先端が歯とかみ合うようになっている。とらえた餌は口吻(こうふん)から遠く離れているが,非常に長くなった基節のおかげで,パンタグラフのように関節を曲げるだけで餌を口に近づけることができる。欧米ではこの捕獲脚からサソリのはさみを連想しミズサソリと呼ぶ。体は淡褐色,棒状で,体長40~45mm,腹端に体長と同じか,それより長い2本の糸状突起(呼吸管となる)がある。水のきれいな,水草の多いところを好み,よく泳ぐ。初夏のころ水面に浮かんだ物体の割れ目や水草の組織内に産卵する。卵はバナナ形で,卵体と同長くらいの2本の呼吸突起をもっている。幼虫時代の腹端の呼吸管は体長に比べて短い。北海道から台湾まで,大陸側でもロシア極東域からミャンマーにかけ広く分布。日本ではほかに小型のヒメミズカマキリとマダラアシミズカマキリが知られている。
執筆者:宮本 正一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報