パンタグラフ(読み)ぱんたぐらふ(英語表記)pantograph

翻訳|pantograph

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パンタグラフ」の意味・わかりやすい解説

パンタグラフ
ぱんたぐらふ
pantograph

電気機関車や電動客車の屋根の上に取り付けて架空電車線(トロリー線)から電気エネルギーを接触集電する装置。本来の語源は四角形の関節接手をもつ棒尺からきたものである。四角形か菱形(ひしがた)の棒枠組みの頂部にカーボン、あるいは銅・鉄とグラファイトとの焼結合金でつくられた摺板(すりいた)sliderをもち、車体とは碍子(がいし)で絶縁する。アルミニウム軽合金またはステンレスの管で構成される伸縮自在の菱形枠組みは、巻ばねと作動軸の組合せによって押し上げられ、集電しないときには下降して折り畳み緊定(きんてい)する。作動方式によって、ばね上昇空気下降方式と空気上昇ばね下降方式の二つがある。摺板は、両端が弓状に曲がったアルミニウム製の集電舟(しゅうでんしゅう)の上にねじで止められている。トロリー線は直線区間でも摺板の局部摩耗が生じないようにジグザグに張られ、また曲線区間も保持構造物間単位の直線の連続なので、摺板と集電舟はそれに対応する幅をもっている。また、高速度で走行中にも安定して連続集電ができるように、集電舟を取り付ける菱形枠組み管頂部には安定用ばね装置が設けられ、50~80ニュートン程度の軽い接触圧力でトロリー線に接する。パンタグラフは、線路の構造上トロリー線の高さが変わっても自在に追随して集電が行える必要がある。したがって、異なった条件の線路に適応しなければならない在来線の車両ではある程度の大きさが要求される。新たに建設された新幹線ではトロリー線の高さにあまり変動がないので、小型・軽量のパンタグラフを採用することができた。

 最近は、菱形の半面だけの構造のZパンタグラフまたはシングルアームパンタグラフが採用されるようになった。JR西日本の500系新幹線電車は、集電舟をシリンダーで上下する集電装置を採用している。その他の集電装置としては、地下鉄など第三軌条方式に用いるコレクターシュー路面電車などに使われるトロリーポールビューゲルがある。

[西尾源太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例