改訂新版 世界大百科事典 「ムカゴソウ」の意味・わかりやすい解説
ムカゴソウ
Herminium lanceum J.Vuijk
草地に広く生育する小型の地生ラン。塊根は類球形。和名は塊根をむかご(珠芽)に見立てたもの。花茎は高さ20~40cm,中央付近に葉を2~5枚,互生する。下部の葉は大きく,線状披針形,長さ10~15cm。上部の葉はしだいに小さくなる。7~8月,黄緑色の花を密に多数つける。花は小さく,径2~3mm,目だたない。唇弁だけが比較的大きく,下垂し,長さ約8mm,3裂して側裂片が長く伸長して距はなく,基部が少しへこむ。種としては東アジア,南アジアに広く分布するが,日本に見られる型は,唇弁の側裂片が長くなる傾向があり,この型は中国から琉球,台湾にも分布する。
ムカゴソウ属Herminiumは球形の塊根,左右に分かれた柱頭,距のない唇弁などで特徴づけられ,東アジアを中心に約10種がある。日本にはもう1種,クシロチドリH.monorchis(L.)R.Br.が釧路の湿原にまれに見いだされる。
執筆者:井上 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報