変形菌類(読み)ヘンケイキンルイ

デジタル大辞泉 「変形菌類」の意味・読み・例文・類語

へんけい‐きんるい【変形菌類】

変形菌

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精選版 日本国語大辞典 「変形菌類」の意味・読み・例文・類語

へんけい‐きんるい【変形菌類】

  1. 〘 名詞 〙ねんきんしょくぶつ(粘菌植物)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「変形菌類」の意味・わかりやすい解説

変形菌類
へんけいきんるい
[学] Myxomycota

真核菌類のうち、細胞壁のない変形体をつくるものの総称。以前は偽(ぎ)変形体をつくるものを含めて変形菌類または粘菌類ともいわれたが、偽変形体をつくる細胞粘菌類とラビリンチュラ類は、進化経路が異なるため現在はこれから除外される。栄養体はアメーバ運動を行う単細胞体(粘菌アメーバ)、または多核を含む変形体である。胞子から生じた遊走子には前端に長短2本1組の鞭毛(べんもう)がある。

[寺川博典]

生態と栄養

被子植物類の根や藻類に寄生するものもあるが、多くは朽ち木・落ち葉、腐植質に腐生する土壌菌である。粒状有機物や細菌などを取り込んで捕食するもののほか、モジホコリカビ類のように担子菌類のキノコを変形体が覆って栄養をとるものもある。変形体内にはグリコーゲンを蓄え、油滴や色素をもっている。色は白と黄が一般的であるが、黒、褐色、紫、青、緑、赤、橙(だいだい)などのほか、無色のものもある。

[寺川博典]

体制と生殖

粘菌アメーバは、単相または複相の一核をもつ。単相粘菌アメーバは胞子から生じるか、あるいは遊走子の鞭毛がとれてできる。単相粘菌アメーバは分裂接合を行うほかに、菌によっては寄生して単相変形体となる。複相粘菌アメーバは接合子から生じ、成長して複相変形体になる。これには微小変形体(原生変形体)、陰生変形体、顕生変形体の三つの型がある。

 以下、変形菌類の特徴に触れる。

(1)休眠体制 変形体、とくに顕生変形体は環境が悪くなると、不規則に密集して角質の塊になる。これは菌核(皮体)といわれ、環境がよくなると、また変形体を生ずる。変形体からは休眠胞子が形成されるが、そのとき一般に変形体から子実体が形成され、子実体に胞子が形成される。なお、若い、小さい変形体の休眠体制はマクロシスト(大包嚢(だいほうのう))とよばれ、粘菌アメーバの場合はミクロシスト(小包嚢)といわれる。

(2)子実体 子実体形成には、光、温度、湿度、酸度などが関係する。子実体の形、色、大きさはさまざまであるが、子実体の表面に栄養胞子を外生する裸実子実体(ツノホコリカビ綱)と、真正胞子を内生する被実子実体(胞子嚢)がある(変形菌綱)。後者には、変形体表面上に膜を堆積(たいせき)して盛り上がって子実体になる場合(変形腹菌亜綱)と、基物上に堆積した膜の上で塊になった変形体から子実体が発達する場合(ムラサキホコリカビ亜綱)がある。

 被実子実体には変形子実体、団塊子実体、有柄(ゆうへい)胞子嚢群の三型がある。変形子実体はある程度もとの分岐した変形体の形を保って網状、枕(まくら)状、ビスケット形などに分断して外壁を生じ、胞子を内生する。団塊子実体は塊状で、まれに直径20センチメートル以上のものもある。有柄胞子嚢群は高さが4.5~25ミリメートルで、これが数百個密生する場合もある。この胞子嚢のなかには、胞子のほかに柱軸、細毛体などの構造をもつものもあり、石灰が堆積するものもある。

[寺川博典]

分類

変形菌類は四綱に分けられる。水生変形菌綱、ネコブカビ綱、ツノホコリカビ綱は各一目を含み、変形菌綱は、変形腹菌亜綱の四目と、ムラサキホコリカビ亜綱の一目を含む。胞子嚢内の細毛体の有無とその特徴は、分類上重要視されるものである。

〔1〕水生変形菌綱
(1)水生変形菌目 微小変形体か粘菌アメーバが、サヤミドロやユレモに寄生して休眠胞子を形成する。詳しいことはまだ知られていない。

〔2〕ネコブカビ綱
(1)ネコブカビ目 微小変形体がキャベツやジャガイモなどの根に寄生してこぶ状にする。宿主細胞内で生活環の大部分を過ごし、真正胞子を塊状に形成する。

〔3〕ツノホコリカビ綱
(1)ツノホコリカビ目 朽ち木その他腐植質に腐生し、裸実子実体を生ずる。ヒメツノホコリカビの子実体は短柄とその先の一胞子からなり、高さは0.15ミリメートルほどである。胞子には多核が含まれている。

〔4〕変形菌綱
(a)変形腹菌亜綱
(1)エキノステリウム目 原生変形体から高さが一般に1ミリメートル以下の微小な有柄胞子嚢を形成し、少数の胞子を内生する。柱軸は発達しない。胞子は微小ないぼで覆われ、発芽すると遊走子を生ずる。

(2)クダホコリカビ目 原生変形体または顕生変形体から、団塊子実体その他を形成する。細毛体はない。胞子壁には刺(とげ)、網目などがある。クダホコリカビ、マメホコリカビは団塊子実体を形成し、アミホコリカビの有柄胞子嚢には柱軸がある。

(3)ケホコリカビ目 陰生変形体と顕生変形体の中間の変形体から、細毛体のある子実体を形成する。ケホコリカビ、ヌカホコリカビなどは変形子実体、ハイイロウツボカビは柱軸のない有柄胞子嚢群を形成する。

(4)モジホコリカビ目 発達した顕生変形体から、一般に高さが0.5~1.7ミリメートルの有柄胞子嚢群を形成し、細毛体がある。ただし、カワホコリカビの黄色の変形体は腐植土や植物体上にはいあがり、大きい団塊子実体を形成する。

(b)ムラサキホコリカビ亜綱
(5)ムラサキホコリカビ目 陰生変形体から一般に有柄胞子嚢群を形成する。胞子嚢には柱軸から分岐した細毛体があり、その細まった末端は連結して網をつくっている。

[寺川博典]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変形菌類」の意味・わかりやすい解説

変形菌類
へんけいきんるい
Myxomycetes; Mycetozoa; slime molds

粘菌類,動菌類ともいう。肉眼的に小型の菌類のようにみえる子実体を生じ,無数の胞子を形成するが,その胞子は発芽して菌糸になることなく,アメーバ状の細胞もしくは鞭毛を有する細胞体となって運動し,細菌,酵母菌のような生物を捕食したりして成長する。その間細胞の融合や核融合などを行い,肉眼でも明瞭な粘液状の変形体に発達する。この変形体はそれ自体アメーバ状運動をし,成熟すると乾燥した場所に移動して再び子実体を形成する。全世界で約 60属 350種知られている。ムラサキホコリカビ,ヤリホコリカビ,モジホコリカビ,カワホコリカビ,ツノホコリカビなどがその代表的なものである。

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