メトイコイ(その他表記)metoikoi

改訂新版 世界大百科事典 「メトイコイ」の意味・わかりやすい解説

メトイコイ
metoikoi

古代ギリシアの在留外人。単数形メトイコスmetoikos。語義は〈移住者〉もしくは〈(市民団と)ともに住む者〉。古典期ギリシア世界の多くのポリスに在留外人身分は存在したが,最もよく事情の判明するのはアテナイである。前6世紀末のケラメイコス出土の一墓碑銘に〈メタオイコスmetaoikos〉という語形で現れるのが現在まで知られる最古の事例である。アテナイの在留外人は一般の外人(クセノイ)とは異なり,国法によって生命財産を守られたが,あくまで市民団の枠外にとどまり,その支配下に置かれていた。人頭税とも呼ぶべき在留外人税(メトイキオン。成年男子は年額12ドラクマ)を支払ったほか,軍制・財政上の義務負担を負った。保証人(プロスタテス)を介して在住届をとるものの,参政権はまったく与えられず,さらに,土地・家屋の不動産の所有権を欠いていた。在留外人の活動分野は商工業を主としていたが,この不動産所有権の欠如は彼らの経済活動を著しくゆがめる結果を伴った。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メトイコイ」の意味・わかりやすい解説

メトイコイ
めといこい
metoikoi ギリシア語

古代ギリシア世界の在留外人。単数形はメトイコスmetoikosで、他の人間集団ないしは共同体のなかへの移動を意味する副詞メタmetaと、居住者を意味するオイコスoikosの合成語。「移住者」もしくは「市民団とともに住む者」を意味する。古典期のギリシア世界では、スパルタを顕著な例外として、多数の国々に在留外人身分が存在したが、もっとも事情のわかるのはアテネである。そこでは、クレイステネスの改革直後の紀元前506年ごろと推定される在留ナクソス人の墓碑銘に「メタオイコス」と読めるのが、現在知られる限り最古の事例である。前5世紀以降のアテネの在留外人は、保証人を介して居住権を認められ、アテネの国法によって生命や財産の安全を保障された反面、在留外人税(メトイキオン)(成年男子は年額12ドラクマ)を納付し、軍制・財政上の義務を負った。基本的には市民団の枠外の存在であって、参政権はなく、土地家屋の不動産所有権をも欠いた。彼らの活動分野は主として商工業の経済分野であっただけに、この不動産所有に関するメトイコイの権利無能力は、ポリス社会の封鎖的性格をもっともよく示しているといえる。

馬場恵二]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「メトイコイ」の解説

メトイコイ
metoikoi

ギリシア諸ポリスの在留外人。アテネのそれが最もよく知られる。長期にわたってアテネに在住し,いずれかの区に寄留して市の保護を受ける反面,人頭税を支払い,公共奉仕,軍役を負担した。原則として,土地所有を許されず,商工業,文化の面に活動分野を求めた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「メトイコイ」の解説

メトイコイ
Metoikoi

古代ギリシアのポリスに住んだ在留外国人
アテネでは商工業に従事し,富裕なものが多かった。税を負担し,軍隊には参加したが,参政権はなく,土地・家屋の所有も原則として許されなかった。

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世界大百科事典(旧版)内のメトイコイの言及

【アテネ】より

…ペロポネソス戦争直前のアテナイの奴隷人口は8万~10万と推定され,農業・商業・手工業・鉱山業の各分野で盛んに使役されたほか,家内の雑用,公文書の記録・保管,市中警備などにおいても,奴隷の働きにまつところが大きかった。 市民と奴隷に加え,第3の中間的な身分として古典期アテナイの社会構成に重要な意義を有したのが,在留外人(メトイコイ)である。彼らは自由身分の非市民で,アテナイ以外のポリス出身者のほか非ギリシア人をも含み,参政権はむろんのこと,不動産所有権からも疎外されながら,同時に人頭税を課され,さらに市民と同様の軍役に服した。…

【ギリシア】より

… このような政治過程のただ中で古典文明が開花したのであるが,その背後では,ポリス社会の衰退が社会のいろいろな分野に進んでいた。アテナイでは商工業の発展が著しく,これに伴って市民や在留外人(メトイコイ)の所有する製作所(エルガステリオン)において奴隷制が大規模となり,多数の奴隷をラウリオン銀山の採掘請負者に賃貸する者も現れたばかりでなく,中小農民による小規模奴隷制も発展した。しかし市民間の貧富の差も拡大し,土地を失う市民も増大した。…

※「メトイコイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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