主たる債務者が債務を履行しない場合に、その者にかわって履行すべき債務(保証債務)を負う者を保証人という(民法446条以下)が、より広く、雇用契約において、被用者が使用者にかけるかもしれない損害を第三者が担保する身元保証の場合をも含めて保証人ということもある。
[淡路剛久]
保証人は、保証契約(債権者と保証人になる者との間の契約)により、主たる債務を履行すべき債務を負うが、主たる債務がたとえば条件不成就(ふじょうじゅ)などにより成立しなかった場合には、保証債務も成立しない。保証債務の範囲については、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他すべてその債務に従たるものを包含する(民法447条1項)。また、保証債務はその目的・態様において主たる債務より重くなることはなく、それより重い債務を負担しても、主たる債務の範囲に減縮される(同法448条)。そして、主たる債務が同一性を失わずに変更するときには、保証人の債務もこれに応じて変更する。なお、同一の債務について保証人が数人いる場合には、各保証人は平等に分割された額についてのみ債務を負えばよい(共同保証人の分別の利益=同法456条)。ただし、数人の保証人の間に連帯関係がある場合(保証連帯)や債務者と保証人との間に連帯関係がある場合(連帯保証)などには、分割されない。
[淡路剛久]
主たる債務者について生じた事由(たとえば、時効の中断や免除など)は原則としてすべて保証人に及ぶ。これに対して、保証人について生じた事由は主たる債務者に影響を及ぼさない。ただし、連帯保証の場合には、一定の範囲(民法434条~439条)で影響を及ぼす(同法458条)。
[淡路剛久]
保証人は、主たる債務者の有する抗弁権を行使できるほか、連帯保証人でない普通の保証人の場合には、催告の抗弁権および検索の抗弁権を有する。催告の抗弁権とは、債権者が主たる債務者に請求せずに保証人に請求してきた場合に、まず主たる債務者に催告せよ、と主張してその履行を拒むことができる権利である(民法452条)。検索の抗弁権とは、債権者が主たる債務者に催告したのちに保証人に請求してきた場合でも、まず主たる債務者の財産に執行せよ、と主張してその履行を拒むことのできる権利である(同法453条)。ただし、検索の抗弁権を行使するためには、主たる債務者に弁済の資力があること、主たる債務者の財産が執行の容易なものであること、を証明しなければならない。これに対して、連帯保証人は前記の二つの抗弁権を有しない(同法454条)。
[淡路剛久]
保証人は、自分の出捐(しゅつえん)で主たる債務を消滅させたときには、主たる債務者に求償していける。求償権の範囲は、委託を受けたか否かで異なる(民法459条以下)。
[淡路剛久]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…中世・近世における種々の契約の保証人。古代の保証人は,律令に債務者の逃亡に際して代償責任を負う〈保人〉の規定があったが,《令義解》では債務者の死亡も含むものと拡大解釈している。…
…(1)江戸時代の金銭債務および明治初年の金穀債務における保証人を意味した語。奈良時代以来保証人には,債務者が逃亡しないことを保証し,逃亡もしくは死亡の場合に代償する〈保人〉系統のものと,債務者が債務を弁済しない場合に債務者に代わって弁償する〈償人〉系統のものとの2種類があった。…
… 現在だけでなく将来においても,売買契約が正確に遵守されるためには,売主はさまざまの保証義務を負った。その一つに保証人の連署がある。各時代を通じて売主の家族,とくに嫡男の加署が圧倒的に多く,その他庶子や夫妻の署名も少なくない。…
…
【民法】
保証債務または保証契約のこと。保証債務とは,債務者(主たる債務者)が債務を履行しない場合に,これに代わって履行しなければならない他の者(保証人)の従たる債務をいい,保証契約とはこのような場合の債権者と保証人との間の契約をいう。たとえば,A(主たる債務者)がB(債権者)から100万円借り受けて,C(保証人)がこれを保証したとすると,Aが100万円を返済しないとCがAに代わってその返済をしなければならない。…
※「保証人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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