改訂新版 世界大百科事典 「モズヒタキ」の意味・わかりやすい解説
モズヒタキ
スズメ目ヒタキ科モズヒタキ亜科Pachycephalinaeの鳥の総称。鳴声が笛声なので,英語ではwhistler,bellbirdなどの名がある。また丸く大きな頭をもつのでthickhead,種によってはモズに似たくちばしをもつものもあるのでshrike-thrushとも呼ばれる。和名のモズヒタキはこの英名の訳である。全長14~35cm。モズヒタキ亜科には約50種があり,インド東部からオーストラリアおよび南太平洋諸島まで分布する。多くは一見ヒタキやツグミに似た鳥で森林ややぶ地に生息し,樹上や茂みの中で,主として昆虫や幼虫類と漿果(しようか)を採食している。モズヒタキ類は一般に地上から1~2m離れた木のまたに枯草などで巣をつくり,2~4卵を産む。繁殖期は8~4月が多い。
マレー半島にただ1種分布するハイイロモズヒタキPachycephala cinereaは,ジャングルやマングローブ林にすむ。オーストラリアには20種分布し,あるものはよくさえずることで知られている。ほぼ一年中さえずり,繁殖期にはとくに盛んに鳴く。東部と南部の森にすむキバラモズヒタキP.pectoralisは,全長約16cm,雄は頭と首輪が黒く,のどが白色,背と腹は黄色の美しい鳥で,明るく大きな声でフィーフィーフィーと鳴く。雌は全身じみな灰褐色。この種は,ジャワからオーストラリア,フィジー諸島まで分布する。
ハイイロモズツグミCollurincla harmonicaは全長約24cm,オーストラリア全土に多くすみ,森の中ばかりでなく都会の公園にも姿を見せる。雌雄同色で,全身ほぼ灰色。ピップ,ピップ,ピップと大きな声でさえずる。ハシブトモズガラFalcunculus frontatusは全長約18cmのオーストラリア特産種で乾燥した林にすむ。頭は白色と黒色の帯模様で体は黄色,頭の羽が長く立っている。くちばしは太く短く,英語ではAustralian shrike-tit(モズに似たシジュウカラの意)の名で呼ばれている。コクカンモズヒタキOreoica gutturalisは雄に黒い冠毛があり全長約20cm。乾燥地に広く分布し,やはり大声でさえずり,また雄と雌が鳴きかわす独特の声があることで有名。この鳥は,チョウやガの幼虫をくちばしで軽くかみ,神経を麻痺させて巣に保存することがある。雛がかえったとき餌不足の場合に利用するらしい。
執筆者:竹下 信雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報