改訂新版 世界大百科事典 「ヤマダカレハ」の意味・わかりやすい解説
ヤマダカレハ (山田枯葉)
Cyclophragma yamadai
鱗翅目カレハガ科の昆虫。翅の開張,雄は7cm内外,雌は10cm内外。雄の翅は茶褐色,雌では淡褐色で,やや黄色みを帯び,前翅には5~6本の鋸歯状横線があり,基部の近くに黄白色紋がある。触角は櫛歯(くしば)状だが,雌では櫛歯が短い。関東以西の本州,四国,九州,朝鮮半島に分布する。成虫は秋おそく出現し,よく灯火に飛来する。幼虫は体長9cmに達する毛虫で,食樹の樹皮とまぎらわしいほどよく似ている。クヌギ,コナラ,アベマキ,クリ,カシなどブナ科の葉を食べる。卵で越冬し,5月ころに孵化(ふか)する。若齢のうちは共同の巣を張ってその中にすむ。8月に老熟し,落葉の間などに灰褐色の繭をつくって蛹化(ようか)する。幼虫の刺毛には毒性があるので,繭に付着した毒針とともに,皮膚にささると炎症を起こす。昔は平野部の雑木林にごくふつうに見られ,東京都内にもいたが,宅地造成などで林とともに姿を消してしまった。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報