クヌギ(読み)くぬぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クヌギ」の意味・わかりやすい解説

クヌギ
くぬぎ / 櫟


[学] Quercus acutissima Carruth.

ブナ科(APG分類:ブナ科)の落葉高木。幹は直立し樹皮は灰黒色で深く縦に割れ、アベマキに似るが弾性はない。葉は狭長楕円(だえん)形で長さ7~15センチメートル、縁(へり)に14対前後の鋭い鋸歯(きょし)があり、クリに似るが葉裏には腺点がない。秋に褐葉し、落葉は翌春までかかる。雄花雌花コナラに似る。堅果は2年目の秋に熟し、球状で俗にオカメドングリといい、外側に反り返る灰色の長い鱗片(りんぺん)で覆われた殻斗(かくと)に半分以上包まれる。本州以南、朝鮮半島、中国、ネパールの温帯下部にあり、コナラとともに雑木林のおもな林木となる。深根性で水あげがよく、傷口からは樹液が溢出(いっしゅつ)しやすく昆虫類が集まる。材は耐朽性が強く杭(くい)や神社の鳥居にも使われ、椚の字はここから由来する。木炭としては火もちがよく、最近ではシイタケ原木として利用される。古名はツルバミ(橡)といい、実の煎汁(せんじゅう)を衣服の染色に用いた。

[萩原信介 2020年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クヌギ」の意味・わかりやすい解説

クヌギ(櫟)
クヌギ
Quercus acutissima

椚とも書く。ブナ科の落葉高木。日本,朝鮮半島,中国に分布する。山野に自生するが,昔は薪炭材として植林された。コナラとともに日本各地の2次林の代表的な樹種である。葉は長楕円形で長さ 12~15cm,鋸歯があり,成葉は無毛でなめらか,クリの葉によく似ている。花は早春葉の伸びるのとともに開花する。雄花は長さ4~6cmの黄色の穂として垂れ下がり,雌花は小さくて枝先につく。果実は殻斗 (かくと) をなす。その形は平らな球形で細い鱗片に密におおわれ,濃黄褐色を呈する。

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