改訂新版 世界大百科事典 「ヤワタソウ」の意味・わかりやすい解説
ヤワタソウ
Peltoboykinia tellimoides(Maxim.) Hara
谷沿いの湿った林床に生えるユキノシタ科の多年草。根茎は短く,肥厚し,長い柄をもつ大型の根出葉がある。葉身は楯状につき,円形または卵円形,直径20~30cm,7~13浅裂し,基部はやや深く切れ込み,ふちには低い鋸歯がある。5~7月,高さ30~60cmの花茎を出し,先に集散花序をつくって淡黄色の花をつける。花茎には普通2枚の短い柄をもつ葉が互生する。萼筒は浅い鐘形で,直径5~8mm,下半部は子房と合着する。萼裂片は5枚,直立し,三角形鋭頭。花弁は5枚,密に短腺毛があり,へら形,先端に少数の鋭い鋸歯があり,萼裂片よりはるかに長く,長さ8~11mm,花時斜開し,花が終わると脱落する。おしべは10本,葯は黄色で裂開後黒色となる。子房は半下位,2室で,中軸胎座に多数の胚珠をつける。蒴果(さくか)は2本の花柱の間で裂けて多数の種子を出す。種子の表面には微細な乳頭状突起が列生している。本州中部以北に分布する。
ヤワタソウ属Peltoboykiniaは日本の特産属で,2種だけがあり,ヤワタソウのほかに,葉が7~9に中~深裂したワタナベソウP.watanabei (Yatabe) Haraが四国,九州の深山に分布している。
執筆者:若林 三千男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報