日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユキムシ」の意味・わかりやすい解説
ユキムシ
ゆきむし / 雪虫
晩秋から早春にかけて現れる一部の昆虫の俗称であるが、大別して二通りのものがある。その一つは、晩秋から初冬のころに北海道や東北地方でみられるもので、白い綿状の分泌物をつけて飛ぶ小さな虫をいう。これらは半翅(はんし)類のアブラムシ科の一群(リンゴワタムシ、ナシワタムシ、トドノネオオワタムシなど)で、雪の降り出す季節に無数に飛び立ち、それが粉雪の舞うようにみえるので雪虫とよばれる。人々はこれを目当てにして冬仕度をし、俳句の季題にもなっている。これらの虫では秋が深まるとはねのある雌が産まれ、綿状の蝋(ろう)物質をつけて飛ぶ。ほかの一つは、雪国で早春に雪上で活動する昆虫のことを雪虫とよび、トビムシ類のクロユキノミなど、カワゲラ類のセッケイカワゲラなど、双翅類のユキガガンボ、クモガタガガンボ、イマニシガガンボダマシ、フユガガンボ、アルプスケユキユスリカなどが含まれる。
[中根猛彦]