改訂新版 世界大百科事典 「ライニス」の意味・わかりやすい解説
ライニス
Jānis Rainis
生没年:1865-1929
ラトビアの詩人,社会運動家。妻のアスパジヤAspazija(1868-1943)とともにラトビアを代表する詩人。本名はプリエクシャーンスPliekšānsで,ライニスはペンネーム。小作農民の子として生まれ,リガの中学を卒業後,1884-88年ペテルブルグ大学法学部に学ぶ。その間,哲学,歴史,フォークロアを広く研究し,作家としての素地を培った。リガに戻るや,帝政ロシアからのラトビアの独立を求めて社会運動に参加,91-95年日刊紙《ディエナス・リエパDienas Liepa》を編集する。97年官憲に逮捕され,名訳とされるゲーテの《ファウスト》のラトビア語訳を獄中で完成した(1898)。1905年脱獄し,スイスにひそかに亡命,ルガノ湖近くのカスタニョーラに居を定め,数々の名作を著した。ラトビアの独立後祖国に戻り,20年以後国会議員,21-25年リガ国立劇場の座長を務め,26-28年には文部大臣を務めた。死後の40年ソ連,ラトビア共和国人民詩人の称号を授けられた。代表作として,自由の象徴としての太陽をたたえた革命の詩《アベ・スオル!》(1910),プンプルスの叙事詩《勇士ラーチュプレーシス》を劇にした史劇《火と夜》(1905),《インドゥリスとアーリヤ》(1911),《リガの魔女》(1928),愛と憎しみをテーマにした旧約聖書の物語の悲劇《ヨゼフと彼の兄弟たち》(1919),国民に最も愛好され,絶えず上演されているラトビアのフォークロアに取材した詩劇《風よ吹け》(1913),《われは奏で,踊った》(1919),そのほか児童文学の作品がある。1977年より全集30巻が刊行中である。
執筆者:村田 郁夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報