プンプルス(その他表記)Andrejs Pumpurs

改訂新版 世界大百科事典 「プンプルス」の意味・わかりやすい解説

プンプルス
Andrejs Pumpurs
生没年:1841-1902

ラトビア詩人貧農の子として生まれ,ロシアおよびラトビアで長く軍人生活を送ったが,過去700年にわたってドイツ人とロシア人による屈辱的支配の苦難をなめてきた祖国惨状を愁い,詩人アウセクリスAuseklis(1850-79)らとともにロマン主義・国民主義の文学運動に参画した。のちにラトビア国内のみならず,ソ連邦内でも有数英雄叙事詩とたたえられる作品《ラーチュプレーシス,ラトビア民族の英雄》(1888)を発表した。この作品は12~13世紀の史実と古くから伝わる歌謡,伝説を巧みに織り交ぜた英雄叙事詩で,ラトビアの独立(1921)に先駆け,同国人の民族意識を覚醒させた。主人公ラーチュプレーシスはラトビアに伝わる熊を母にもった伝説上の無敵の勇士で,ラトビアになだれこんできたドイツのリボニア騎士団を次々と迎え討つが,はかりごとにより自分の秘密の弱点(母から受けついだ熊の耳)を敵に知られ,悲劇的最期を遂げる。この叙事詩には,ラトビア人の神々の集会悪魔魔女の妖怪談,主人公と美姫ライムドゥオタとの悲恋,ラトビアに今も伝わる歌祭りの夏至祭光景など,古きよき時代のラトビアが描かれており,同国の初期の歴史,フォークロア風習を知るうえで格好の資料である。優れた邦訳(袋一平訳《勇士ラチプレシス》1959)がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のプンプルスの言及

【バルト神話】より

…なおビエザイスの研究を取り入れて,モスクワの言語学者イワーノフVyacheslav Vsevolodvich Ivanov(1929‐ ),トポローフVladimir Nikolaevich Toporov(1928‐ ),リトアニア出身でアメリカ在住の考古学者ギンブタスMarija Gimbutas(1921‐ )もバルト神話学に多くの寄与をしている。
[後世への影響]
 バルト諸国には本来の意味の叙事詩は存在しないが,ラトビアの詩人プンプルスは叙事詩《勇士ラーチュプレーシス》(1888)にバルトの神々や魔女たちを登場させ,さらには夏至祭の太陽歌を取り込んで一大傑作を後世に残している。ラトビアの歌謡はバロンス以後も採集がつづけられ,今日まで100万という驚異的な数に達している。…

※「プンプルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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