ラックカイガラムシ(読み)らっくかいがらむし(その他表記)Indian lac insect

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラックカイガラムシ」の意味・わかりやすい解説

ラックカイガラムシ
らっくかいがらむし
Indian lac insect
[学] Laccifer lacca

昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目のラックカイガラムシ科に属する昆虫。インド、インドシナに分布し、シェラックの原料となる樹脂状の分泌物を出すので商業上重要な昆虫で、かつてはカイコミツバチとともに三大益虫とされた。台湾にも移入されたことがある。雌はやや球形で頭と尾端部が細くとがり、はねも脚(あし)もなく、触角痕跡(こんせき)的、体はやに状の分泌物に包まれている。体の中央辺に多数の小孔(しょうこう)があって、やに状物質ラックを分泌する。雄には有翅型と無翅型があり、年二世代のうち、第一世代は両型が現れるが、第二世代は無翅型だけである。幼虫は第一齢だけ脚が完全で移動できる。多種の樹木を宿主とすることが知られている。ラックカイガラムシ科Lacciferidae (lac insects)の種はほとんど熱帯から亜熱帯にかけて産し、雌は丸くて、やに状の分泌物に包まれる。

[中根猛彦]

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百科事典マイペディア 「ラックカイガラムシ」の意味・わかりやすい解説

ラックカイガラムシ

半翅(はんし)目ラックカイガラムシ科の昆虫。インド〜インドネシアフィリピン,台湾などに分布。クムス(ムクロジ科)など種々の植物寄生。雌は厚いラックの分泌物でおおわれ,これからシェラック精製
→関連項目カイガラムシ

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世界大百科事典(旧版)内のラックカイガラムシの言及

【臙脂】より

…杜甫の〈曲江にて雨に対す〉と題する詩句に〈林花,雨を著(つ)けて臙脂落ち,水荇(すいこう),風に牽(ひ)きて翠帯長し〉とある臙脂はこれを指す。 つぎに紫鉱は,紫(しこう)ともいいラックカイガラムシ(現在の中国名は紫膠虫)の分泌物からとれた染料のことである。唐の段成式の《酉陽雑俎(ゆうようざつそ)》によれば,真臘(カンボジア)産で,真臘では〈勒佉(ろくこ)〉と称したという。…

【カイガラムシ(介殻虫)】より

… 多くの害虫を含む一方,かつては人間生活に必要な製品原料を大量に提供してくれた有用昆虫でもあった。ラックカイガラムシLaccifer laccaの分泌物を精製して得られるシェラックは,塗料,接着剤,電気絶縁材,レコード盤などきわめて広い用途をもち,インドや東南アジア諸国で養殖されたものが大量に輸入されていた。また,メキシコ産のコチニールカイガラムシの虫体から得られるえんじ色の色素は,食紅や各種染料として用いられ,現在もわずかながら養殖が行われている。…

【害虫】より

…また有用昆虫などで,その需要の変遷によってその評価が変わる例もある。例えばラックカイガラムシやコチニールカイガラムシは,ラッカーや染材原料をとる有用虫として利用することがなくなったところでは,一般害虫とされるようになり,アイが染料用に栽培されたころは,その葉を食べるものは害虫であったが,栽培せず雑草化したときには雑草防除に役だつ益虫とされるようにもなった。要するに害虫とか益虫というのは,あくまでも人と虫との相対的な関係からの呼名である。…

【シェラック】より

…セラックともいう。寄生昆虫の分泌物で,ラックカイガラムシLaccifer laccaがインドボダイジュFicus religiosa L.などの枝に寄生し,自分を保護するために樹脂状物を身のまわりに分泌する。これをあつめてとったものがスティックラックstick lacで,これをさらに精製したものがシードラックとして商品化されている。…

※「ラックカイガラムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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